【沼酒3選】コンテストでは見られない、クセがおいしい中毒性の高い日本酒
日本酒を好きになる入り口は「ワインのよう」「きれい」「フルーティ」なものが多いように思えます。大吟醸とか、金賞受賞とか、ワイングラスで飲んで美味しい〜〜など「冷たくキリッと味わう」タイプたち。もちろん大好きです。
一方、そのような主流の価値観から完全に逸脱したお酒も多くあります。
「美味しい」というような美しい字面ではなく、もっとごつごつとした「旨い」酒。悪魔的な吸引力があり、飲む人を日本酒の沼に引き込むお酒。
そんな沼に生息するお酒たちを紹介します。(今回は熱燗だからうまい、というのは除外しています)
沼酒のセレクトポイント
危険? 身体に緊張をあたえる
飲んだ瞬間に思考を飛び越えて身体が「やばい」と信号を送る。しかしそこを超えてじっくり味わえば、戻れない身体になる。
よくわからないけど旨い
甘い、旨味がある、余韻が長い…などという言葉を飛び越えて「よくわからないけど堪らない」という、第六感にうったえかけるもの。
やりすぎ
旨味の酒なら、とんでもなく旨味があり、いつまでも旨味がある。ほどほどという言葉を知らず、突き抜けた個性があるもの。
その1: 「不老泉」 思わず「バカだ…」と声がもれた、身悶えるほどの「旨酸」
滋賀県:上原酒造(http://furosen.com/)
不老泉 山廃仕込純米酒 参年熟成
南大塚の「こだまや」さんで購入したお酒。造りの特徴は酵母無添加の山廃づくり。それを3年熟成させてから出荷しています。
まず香り、熟成香がプンとたち、飲む前から「これはやばそう」と、思考より先に身体が危険を感じます。
味は、とにかく濃い。「旨味」がぐっと下に降り、それに反発するように「酸」が上に跳ね返す。あとよくわからない味覚成分が舌をぐいぐい押してくる。口の中で上に下に、おいしさが暴れます。
旨味酒はお燗でないと「閉じている」印象になることが多いのですが、この不老泉は常温でも思いっきり味が膨らみます。飲んだ瞬間、本当に「これはバカなやつだ」と声がでました。続けて人にすすめたところ、同じく「バカだ…」と感想がでました。
お燗にすると旨味が甘みにかわり、まさに「味が開くの」ですが、僕は危険な雰囲気をまとった常温で飲み進めています。
ちなみにこちら、こだまやさんに聞いたところ「開栓してからの進化(追熟)もいい。むしろそこからが本番」とのこと。楽しみでたまりません。
その2:「夢窓」 桁違いのどっしりさ。永遠に残る「深み」
三重県:新良酒造(HPなし)
夢窓 特別純米
このお酒を知ったのは、仕事で日本酒の本を作ったとき。監修の先生(鎮守の森の竹口さん)に「ほかに真似のできないお酒だ」と聞き、紹介すべくコンタクトをとったものの、なかなか電話にでない、そもそも露出を煙たがる、都内では入手できないという、そもそも現物を見るまでが大変なお酒でした。(なんどもお願いし、載せさせていただきました)
地元にむけて熟成・純米の酒を作り続ける、本当に家族経営の小規模蔵だそう。これは、なんとしても飲みたいと思い、その「鎮守の森」で入荷していたときにお願いしていただきました。
熟成らしくすこしトロミがあり、飲んだ瞬間「米」感がいっきにやってきます。旨味や甘みといった概念ではなく、とにかく味かが「深い」、「深すぎる」。飲み込んでもずーっと「深み」が残ります。 意味わからないと思いますが、本当に「深い」以外の言葉がでてこないのです。
その3:「弥栄鶴」 枯れているのに洗練!? 骨太なのにジューシー!? 奇跡のハイブリット酒
京都府:竹野酒造(https://yasakaturu.co.jp/)
弥栄鶴 山廃純米70
最後は近所の自然派酒屋さんでおしえてもらった純米酒。出荷は平成30年ですが、蔵で数年熟成しているそう。価格は1000円くらいと安価。
価格が1000円ちょっととあり、やすく野太いお燗酒を想像していました。一口目はまさにそれ。古酒レベルの「枯れた」風味と、舌を攻撃するカラメルのような焦げ、強めのクセ。どこか「薬」を思わせる印象です。しかし、ここからどんどん変化します。
口のなかに含んだお酒は、米米した旨味主体から、甘みがじわじわ顔をだし、しまいには果実酒のような後味に変化。コク深く重さはあるものの、飲んでいる間にむしろ「軽さ」を感じ、飲み終わりはさっぱり。古酒の顔がありながら、新酒のようなふくらみもある。
ここまでくると、もうわけがわからない。
わけがわからないままもういっぱい、もういっぱいと飲み続けてしまう。これが1000円…安すぎます。
以上、ここ何カ月かで取り憑かれたすごいお酒でした。
結論をいうと、酒屋の店員さんがニヤリとして教えてくれたものは、沼酒の率が高いです。
これぞ、という沼酒をご存知のかた、ぜひお教えください。