コンビニにあるパック酒【鬼ころし】実はすごかった! 日本酒のプロにその魅力を聞く
「鬼ころし」という日本酒があります。
私が大学生の頃、それは『罰ゲームのお酒』でした。巷では日本酒を飲まない理由として「若い頃に安いパック酒で悪酔いしたせいで日本酒が嫌いになった」という定型文を聞くことがありますが、その主犯です。
私にとって鬼ごろしのイメージは(本当は「ころし」だけど、ずっと「ごろし」と濁点をつけて記憶していました)、「嫌われ者の日本酒」。日本酒を好んで飲むようになっても手に取ることはありませんでした。
しかし最近、SNSで「鬼ころし」を投稿している「くぼたさん」を知りました。仲間と飲んだり、幸せを悟ったり、エモいのです。鬼ころしなのに。
実は「くぼた」さん、日本酒界のすごい人物。広島大学「日本酒サークル」創設者であり、日本ソムリエ協会認定の資格「SAKE DIPLOMA」の保持者。現在は日本酒メーカーに研究職として勤めているそう。
そんな、ガチの日本酒エリートが、なぜ「鬼ころし」の肩を持つのか? 「鬼ころし」のどこにそんな魅力があるのか? 直接くぼたさんに教えてもらいました!
記事の後半では、夏にうれしい「鬼ころし」の新しい飲み方も紹介します!
同じ「鬼ころし」でも、セブンとローソンで違う?
──よろしくおねがいします! すごい!両手に「鬼ころし」ですね!!
「ええ、この2つの『鬼ころし』、実は表示がちょっと違うんです…(ひっくり返して)ここ、見えますか?」
「製造ラインが違うんですよね、同じ鬼ころしなのに。売っているコンビニがセブンとローソンだからかな。まあとにかく、この鬼ころしは好きでいつも飾っています」
プロが断言「鬼ころし、普通においしいですよ?」
──日本酒の専門家であり、人一倍味に敏感なはずのくぼたさんは、なぜ「鬼ころし」を推しているのでしょうか?
「『鬼ころし』って、普通においしいですよ? めちゃくちゃ美味しい!…ってほどではないにしても、普通に飲めるお酒だと思っています。
僕は普段からお酒を飲むのですが、例えばお酒の勉強したいときは日本酒専門店でいろいろな銘柄を飲みますし、古い居酒屋でその場の雰囲気を楽しみたければ、そこで『酒』としか書かれていないお酒を頼むこともあります。シーンによって飲みたいお酒って変わるんですよね。
そんな感じで『鬼ころし』も、みんなで楽しく飲むシーンにはぴったりなお酒のひとつだと考えています』
──「鬼ころし」は悪酔いする、という声もありますが。
「飲み方のせいじゃないかなと思いますよ。一気飲みをして、酔い潰れたときのお酒がたまたまパック酒だったとか。で、『味わい』って脳が感じ取るものですので、その記憶で苦手なイメージがついてしまう」
「また、これは『鬼ころし』に限らないのですが『パック酒=よくないお酒』イメージがあることも確かです。
でも僕は、せっかくいろいろなお酒があるのにパック酒が選択肢に入らないのは勿体無いと思うんですよ。実際に味わった上で飲まないのならいいのですが、最初から飲もうとしないのは違うなって。
今は地酒をはじめ『特定名称酒』(純米大吟醸とか、大吟醸とか、そういうスペックのお酒)ばかりが取り沙汰されていますが、日本酒全体の売上の中で、特定名称のない普通酒は約60%(パック酒は50%)あるんですよ。その60%を楽しく飲む人が増えることこそ、日本酒好きな人を増やすことにつながるかなって。日本酒を仕事にしている身として、日本酒を手軽に飲んでほしいと思ってSNSで投稿しています」
※ちなみにくぼたさんの職場は鬼ころしと無関係です
くぼたさんプレゼンツ「鬼ころし」のここがすごい!
くぼたさんに「鬼ころし」のポイントを3つ教えてもらいました!
①鬼ころしはひとつじゃない!全国各地のメーカーが醸造!
──今回、くぼたさんにお話をお聞きするにあたって一番驚いたのが「鬼ころしはひとつじゃない」ということ。
「手に入りやすいものは『日本盛』や『清洲桜』(※)ですが、実は全国各地に『鬼ころし』というお酒があるんです。大学の日本酒サークルで『鬼ころし』飲み比べの会をやったんですけど、その時ですら13種類くらい集まりました。全国には30-40くらいになるんじゃないですかね」
※ともにメーカー名
②鬼ころしは宝探しだ!
「『鬼ころし』って宝探しみたいなんですよ。地方に旅にいって、スーパーの清酒売り場を覗いてみて、知らない『鬼ころし』があったらめっちゃテンションがあがります。
同じ『鬼ころし』なのに、メーカーによって味も全然違う。自分に合うものもあれば、そうじゃないものもある。だからこそ掘り出し物という感じがします。まあ合わなくても100円くらいですからね。それくらいの気軽さがいいんですよ」
③仲間と気軽に飲める最高のお酒!
「これは僕が学生時代にやった遊びですが、CGA(コンビニ・ゴー・アラウンド)っていって、コンビニでお酒を買って、飲みながら次のコンビニにいって、そこでまた買うというゲームです。深夜、終電も終わってみんなで40分くらい歩いて帰るときにやっていたかな。
で、最初の頃はビールとか買っていたんですけど、あるとき『鬼ころし』を選んでみると、結構いけたんですよ。当時は学生でお金もなかったから、100円台で買えるお酒はありがたいですし、パック酒はストローなので歩きながら飲んでもこぼれない。
僕にとって『鬼ころし』は、仲間とわいわい遊びながら飲むときの気軽なお酒なんです」
くぼたさん的、有名な「鬼ころし」レビュー
ここからは、くぼたさんが愛飲する3つの『鬼ころし』の解説と、おすすめの飲み方を教えてもらいます!
①万能な鬼ころし「日本盛 赤」は熱燗もおすすめ!
──兵庫県西宮市にある「日本盛」は、赤・青2酒類の鬼ころしを出しています。なかでも、くぼたさんが愛飲しているのは「赤」です。
「僕の中で、もっとも好きな『鬼ころし』です。あまり酸がたたずに、普通においしいというか。なのでこれはもう、そのまま飲むことが多いです。
ええ、ストローですよ。あ、初めてストローで飲む人は、ジュースのような感覚で一気に吸ってしまって、鼻からアルコール感を強く感じることがあります。ストローに慣れるまでは、ちょっとずつ吸うといいですよ」
「もちろん器に注いで飲んでも大丈夫です。熱燗もおすすめですが、温度を上げすぎると甘みを感じにくくなるので、燗冷まし程度がいいですね。でもそこまでする人もいないでしょうから、普通にマグカップなどに入れて、レンチンで様子をみながら飲んでみてください」
②フレッシュな「日本盛 青」は凍らせてみて!
──続いて、同じ日本盛でも「青」。こちらは「しぼりたて」で「フレッシュ」なところが特徴なのだそうです。
「酸味があるタイプです。僕は酸味からくるツンとした酒質が得意ではないので赤の方が好きなのですが、周りの友人たちは青の方が好きという人が多いですね。
青は、パックごと凍らせてみるのもおすすめです。アルコール度数は13度と一般的な日本酒より低いので凍りやすいです。そして、凍ったままソーダで割って飲む、青はこれがおすすめです」
③鬼ころし界のスタンダード「清洲城信長 鬼ころし」は「●●●ボックス」が合う??
3本目は、愛知県にある清洲桜醸造の「鬼ころし」。
「多分、一番有名な『鬼ころし』じゃないですかね。特徴は、日本盛の赤より少しだけすっきりとしているところです。
これもそのまま飲むことが多いのですが…暑い夏の日におすすめの飲み方があります。それが『アイスボックス』に『鬼ころし』をいれて、そのまま飲むこと」
──えっ、おいしい。最高に夏です。アイスボックスのグレープフルーツの苦味がお酒と一体になっている気がして、ごくごく飲める。けど確かにお酒感も感じる、そんな背徳的な味になりました!
「実は、日本酒のアイスボックス割り、とある酒蔵でも人気らしいですよ」
自分にぴったりの「鬼ころし」と出会えますように!
──鬼ころしの魅力を教えていただき、ありがとうございました!これから鬼ころしセカンドデビューしてみます。
「いっておきますけど、期待しすぎないでくださいね!」
──え!!!
「繰り返しますが、『鬼ころし』は100円のお酒なんですよ。それが、いろいろな土地にあって、いろいろなタイプがある。高いお酒と遜色ないと思うこともあれば、どうしても口に合わないこともある。でも、100円ならそれも楽しくていいでしょうってところです。
『日本酒の宝探し』が、100円くらいで、コンビニやスーパーでできる。それが『鬼ころし』の魅力だと思います」
くぼたさん、ありがとうございました!
くぼたさんがお燗番をする8月の日本酒イベント告知!鬼ころしと関係なく日本酒のすごい方なのです!
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もちろん、お酒を飲みます。