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【推薦の店】酒と肴 ひらの(新橋) 「おもしろい!」と評判の秘密は「文脈力」でした
飲み屋さんを開拓するとき、私は大抵「信頼できる人(お酒好き、飲食店など)」が実際に通っている「推薦の店」を選びます。
今回うかがったのは、酒販店の人やお酒メディア関係者たちが多く通う新橋の「酒と肴 ひらの」さんです。
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評判の声は「おもしろい!」が多数。おすすめの理由が「おいしい」や「豊富」「レアなお酒」「価格」などではなく、「おもしろい」? 体験してみます。
「メニューにない日本酒」がデフォルト!
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店内は、カウンター6席程度、テーブル3卓程の、比較的小さな空間です。
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「ひらの」は、料理店というより「酒バー」(店名は「酒と肴」で、「酒」がごはんより前にきている)。フードはどれも「肴」になりそうなものばかりです。
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早速一杯目、どれを選ぼうかと黒板のメニューを眺めていると、「黒板に書いていないものもたくさんありますので、好みでもなんでもいってください」と店員さん。他のお客さんの様子を見てみると、グラスに注がれるお酒はどれも「メニューにない銘柄」ばかりです。
よし、わかった。いきます。
恐る恐る「飲み比べで楽しめるお酒とか、そういうのありますか?」と言ってみると…店員さんは「かしこまりました」と冷蔵庫の方へ。よかった、こういう注文いけるお店なんだ。(この日、最後までメニューにあるお酒はでてきませんでした)
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「朝日鷹」。あの稀少&高級で知られる「十四代」の地元向け銘柄がやってきました。それも生酒と生貯蔵(瓶詰め後火入れ)の飲み比べ。メニューに書かれていないどころか、都内でなかなか見れないやつです。当然というか、すごくおいしい。
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お通しは「鶏肉トマト煮」と「おかゆ」。日本酒に「合う」のはもちろん「これからたくさん飲みたくなる」2品です。ひらの、すでによいです。
メニューではなく、お店の人との会話でお酒を選ぶ
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お刺身盛り合わせ。右下にあるのは、ほうぼうの肝。こういう酒に合うものが付いているのがうれしいです。
次の日本酒は「お刺身と楽しめるものを」とお願いしてみました。
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いい、本当に刺身とあいます。「大抵魚にあう辛口」みたいな鉄板ではなく、甘みがありながらも余韻のコクが魚の旨みと寄り添います。自分だと絶対に選べない組み合わせ、店員さんに任せてよかった…。
お客さんは常連さんがほとんどのようで、楽しげなやりとりが飛びかいます。その中心には店主がいて、軽快に料理を作り、お酒を注いでいきます。
店主の飄々とした雰囲気がお店の空気になっているというか、近すぎず遠すぎず、熱すぎず冷たすぎずの空気があり、一見でも居心地のよさを感じます。
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次の日本酒「米宗」は、隣のお客さん(常連)が「私はこれ(米宗)でずっといける!」といっていたもの。そこに店主の「このお酒は、いまぐらいの後半(瓶の中の半分以下にへっている)の方がおいしいんですよ」という声を聞き、思わず「ください!」と頼みました。
他の人のおいしそうな様子に釣られてつい飲みたくなるのも、居酒屋さんの楽しみ方のひとつでした。
完全に「おまかせ」で頼んでみた
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常連と思わしきお客さんが来店し、カウンターにつくやいなや「なにかお酒ください」とオーダー。すごい、常連となると「完全おまかせ」になるのか。
もちろん、店主と常連さんの間柄(相手の好みがわかっている)だからこそ成立することだとは思いますが…やってみたいです。これまで出てきたお酒はどれもが好みだったから、きっと次も大丈夫なはず。
「次は…おまかせでお願いしたいです」
「はい、かしこまりました」
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予想の斜め上をいく「3杯飲み比べ」がやってきました。「『菊鷹』の杜氏をされていた方が、現在は『光栄菊』にいます。これは『同じ杜氏さんが作ったお酒』の3本です」とのこと。
比べてみると、確かに共通する部分と、変わった部分があっておもしろい。「おまかせ」とオーダーして「おいしいかどうか」ではなく「楽しい飲み方」が出てくるの、すごくいいです。
期待を気持ちよく裏切る「楽しい」お酒体験
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最後にもう一杯と思い、
「“常温で”おまかせをお願いします」とお願いしてみると…
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熟成酒が2杯もでてきました! しかも片方の末廣は1986年という「長期熟成」。両方ともいい具合に色づき、とろりとしています。
一杯目の朝日鷹(すっきりフルーティー)から、最後の熟成(がっつりクセあり)まで、高低差がすごいです。
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「酒と肴 ひらの」さん、楽しいです。
「おまかせ」で注文したとはいえ、大体は「こんなのがくるかな?」「好みと合うかな」のような、何かしらの期待があるものです。ひらのでは、ことごとく期待を「いい意味」で裏切るお酒がでてきます。
センスというには簡単すぎる。料理との相性もあるし、これまでのお酒の傾向や飲んだ反応もあるでしょう。カラクリはよくわからないのですが、「おまかせ」の気持ちを受け取って、その流れの上で遊び心をもって返してくれる。だから驚くし、楽しくなる。
この「文脈の力」がすごいです。
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注文と、提供と、たったそれだけのやりとりでも、こんなに「おもしろく」感じれるんだと思いました。そして酔いました。
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きっと、初訪問だったので、幅広いタイプのお酒がでてきたのかと予想します。次やその次、きっとまた違う「おもしろい」がありそうです。
急いで再訪しなければいけないお店にであってしまいました。
ひらのさん、ごちそうさまでした。
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