とつげき隣のヒトハコさん11:実店舗オープンに向けて古本市と貸棚書店へ「シスターフッド書店kanin」
今回も2023年3月に開催された「第2回 長岡京セブラボ古本市(京都府長岡京市)」で知り合った方をインタビュー。2人組の箱主「シスターフッド書店kanin」さんから話を伺いました。
2人組箱主というと、第1回のインタビューに協力いただいた、星月夜さんもなのですが、同学年の2人組という異なる関係性で活動されています。
また、お話を伺った4月時点では活動を始められたばかりで、いつは実店舗を……という段階でしたが、この記事を公開した現在、オープンに向けたお話が具体化されています!
(いや、さっさと記事にまとめて公開できてなかったから、話にタイムリーさがなくなってるやん! って、ツッコミ入れられたらそれまでなんですが)
屋号の由来は「女性同士の連携」+「うさぎ」
―お2人で活動されている屋号「シスターフッド書店kanin(カニン)」は、どんな由来で付けられたのですか?
店主©さん:「シスターフッド書店kanin」は、「店主2人+お客さんによる女性同士の連帯=シスターフッド」と、うさぎ年が由来です。店主2人がうさぎ年生まれで、書店活動を始めたのもうさぎ年ということで、デンマーク語で「うさぎ」を意味する「kanin(カニン)」を屋号に付けました。
デンマーク語を採用したのは、「うさぎ屋」とか「うさぎ堂」はたくさんあるので、Google検索しても他にまぎれない名前にしたかったのと、店主Sがデンマークに住んでいたことがあったからです。
―ロゴのデザインは誰かに依頼して作ってもらったのですか?
店主Sさん:看板は店主Ⓒの友人で、奈良で切り絵創作や文章を書いて発表している美月さんにデザインしてもらいました。
―活動はうさぎ年である今年(2023年)からとのことですが、きっかけを教えてください。
店主Sさん:もともと私の夢が「経済的になんの憂いもなければ、やりたいのは本屋兼、編み物カフェ兼、ひとり出版社」でした。でも、お金がないから無理無理、と思っていたのですが、著書『魅力あふれるうるわし古都 奈良へ』で奈良の「cojika books」さんを取材した際、「できますよ」と背中を押され、やってみようかなと決意したんです。
そして、仲が良い&こちらも本好きの店主Ⓒに「一緒にやらへん?」と声をかけたところ快諾してもらい、女子が本をお酒を楽しめるブックカフェをやろうということになりました。
実店舗も探していますが、「まずは古本屋のなんたるかを知らねば」と、店主Ⓒがいろいろ探してくれ、一箱古本市の存在を知り、試しに出してみよう、ということになりました。
それで、2023年3月19日に開催された「第2回 長岡京セブラボ古本市」の出店者募集情報をツイッターで見つけてくれて参加。同時期にあべのベルタにある書肆七味も見つけて、棚を借りての出店もはじめました。
古本市や棚を借りて出ていれば認知度が上がって、実店舗を出した時「ああ、シスターフッドさんね」と認識してもらえそう、という下心もあります。
―なるほど。まずはネットワークを広げて知名度を上げてから、実店舗へ……という計画なんですね。
店主©さん:オンラインショップは立ち上げましたが、実店舗はまだ具体的には固まってなくて、「できたらなー」という段階です。場所もですし、自分たちの準備もまだ整っていないので。
店主Sさん:お店の内見はしてるんですよ。それで「いいな」と思ったところもあるんですけど、考え出したら「ちょっと待てよ」と思ったり。
あと、商工会議所にも事業計画書を出して相談してるんですけど、数字の立て方がなってないと指摘されて、やり直しているところです。融資を受けるとなると、事業計画書はすごく大事なので、しっかり計画を立てないといけません。実店舗のオープンにはまだもう少しかかると思ってます。
選書は屋号にちなんだものもを取り入れて
―一箱古本市への出店や、みつばち古書部、書肆七味の棚に入れる本の選書傾向を教えてください。
店主©さん:基本的に、「シスターフッド」や「フェミニズム」に関する本は必ず入れています。また、店主2人が好きな源氏物語や女性作家の作品も多いです。
店主Sさん:ただ、場所によってちょっとずつ、変えたりもしたんですよ。書肆七味はスーパーの前にある店舗だから、女性客が多いかなと思って、私は旅行のガイドブックとかも混ぜました。あと、結構ゴリゴリのフェミ本も入れてみたんですけど、フタを開けてみたら思ったように売れず……。
店主©さん:多分、どこに置いたら売れるとかっていう、場所の問題だけじゃないんですよね。
興味を持ってくれる人は居るんだけど、自分たちが「フェミニズムとは、こういうものですよ」と、伝えた方が手に取ってもらえるような。3月、4月と活動してみて、そんなふうに感じました。
イベントだと自分たちがお客さんと対話する機会も多いので、取っつきにくいと思っている人や誤った解釈をしている人にも、直接伝えられますし。
だから、自分たちのお店を持てば、いつでもそこには自分たちが伝えたいテーマの本があって、お客さんが本と出会える状態にできる。そういうのもあって、お店をやりたいなという気持ちが高まってるんです。
―まだ活動され始めたばかりですが、これまでの活動で感じたことはありますか?
店主Sさん:一箱古本市への出店は思いのほか楽しくて刺激もあり、手ごたえを感じました。セブラボで女性がたくさん本を買ってくれたのも印象的で、女子のための場になる実店舗を作りたい、という気持ちがますます強くなりました。
実店舗オープンを現実に
―これからの活動でやってみたいことというと、やはり実店舗オープンでしょうか。
店主Sさん:そうですね。お酒と本を昼から、おひとりさまでも友達とでも安心して楽しめる、女子のためのブックカフェを開店したいです!
―ちなみにお店ではどんなお酒を出そうと思ってますか?
店主©さん:「フェミニズム」や「シスターフッド」のお店なので、せっかくだから扱うお酒も、女性の杜氏さんや醸造家さんをフォーカスしても面白いのかなと考えてます。
店主2人の友情は『源氏物語』から
―一緒に書店活動をされるお2人の関係は、どこから始まったのでしょうか?
店主©さん:小学校1年生のとき、同じエレクトーン教室に通っていたんですが、その頃は「友だち」というほどの仲ではありませんでした。
親しくなったのは、6年生で同じクラスになってからです。2人とも『源氏物語』を題材にした少女マンガの金字塔『あさきゆめみし』の大ファンだと判明したのがきっかけでした。
店主Sさん:私は「紫の上」、店主©は「雲居の雁」が好き、ということから話が弾んで、クラスメイトを登場人物になぞらえたりもしていましたね。
それから、店主©のお母さんが取っていた雑誌に『源氏に愛された女たち』(瀬戸内寂聴著)が掲載されていて、読ませてもらい、『源氏物語』にどんどんハマっていきました。
そして、「原作も読まないと!」となって『あさきゆめみし』の底本とされる円地文子訳を読みました。
『源氏物語』にハマったのがきっかけで、平安時代にも興味を持って、お互いに平安時代を舞台にした物語を書いて見せ合ってました。『源氏物語』の登場人物になりきって詠んだ和歌を送って、返歌を待つごっこ遊びもしてました。
―なんだか雅やかな交流の仕方ですね!
店主Sさん:変な小学生だったんですよね。
店主©さん:今思うと、中身はお笑いのネタみたいな感じですけどね。
店主Sさん:でも、ずっとガッツリ交流していたわけでもなくて、高校や大学は別のところに通ってました。ただ、要所要所でつながってる感じで、大学時代にはもう1人の友人も交えて、一緒にベトナム旅行に行ったこともあります。
店主©さん:東京に行ったとき、泊まらせてもらったりとかもありました。そんな感じで、離れるときもあったけど、何かあると会って話してというつながりが続いてました。
―けんか別れとか、決別する出来事もなく、ほどほどの距離で交流が続いてきたんですね。
店主©さん:今でこそ一緒に活動して、コンビみたいになってますが、今まで別にコンビを組んでいたわけでもないのでね。
店主Sさん:もう、いい大人ですしね。
店主©さん:でも、これから活動していく中で、何かあるかも!?
店主Sさん:酔っ払って、感情的になって、物理的にどうこう……とか。
―そういう展開にならないように、お酒は控えないとですね。
店主Sさん:でも、お酒は控えられない。
憧れ・目標とする人
―活動するうえで憧れる人や目標とする人はいますか?
店主Sさん:実店舗を構えている方はすべて憧れていますね。しっかり考えて、私たちも実店舗をオープンできるようにしたいと思います。
後記
なんやかんや取材協力いただいたあと、とあるお店にて飲みの席をご一緒させてもらい、今回のインタビューもご機嫌な状態で終えた読酌文庫。そして、ちゃんと記事にまとめられるんかと不安になりながら、音源を聞き返すのでした。
(何だか前回も似たようなことが……)
インタビュー時点では、実店舗オープンは計画段階でいらっしゃいましたが、その後お店も決まり、8月のオープンに向けて準備を進められています!
今回のヒトハコさん
屋号:シスターフッド書店kanin(カニン)/@Kaninsisterhood
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