読酌文庫は初出店でビギナーズラックに恵まれる?【文学フリマ回顧録1】
数回に分けて、文学フリマの思い出を振り返ってみたいと思います。今回はその1回目。
まずは2020年1月、初出店したときのことを中心に振り返ります。
一次創作への憧れ
読酌文庫の中の人は、もともと二次創作で遊んでいる人でした。
幸か不幸か、マイナージャンルだったので、カップリング論争でギスギスするとか、大手サークルの派閥争いだとか、そういうこともなく……左右逆なカップリングで活動する同士でも、まったりとした雰囲気で楽しめていたと思います。
……逆に言うと、マイナーだから需要の絶対数も少なくて、イベント参加費はおろか印刷代を回収することさえままならない、まさしく趣味で課金している感じの活動状態でした。
まぁ、それはそれで楽しければOKでしたし、二次創作という活動フィールドにおいて、ガッツリ黒字利益を得るってのも……いろいろアレじゃないですか!?
で、そんな趣味を楽しみつつ、同じジャンルの二次創作をしている人の中には一次創作をしていて、コミティアとかに出ている人も居たんですよね。
自分の世界観で、自分が作る物語を発表できるのもすごいな、良いなって思いました。二次創作で、自分の妄想や欲求を満たすのも愉いんですけどね。二次創作ゆえの枷というか、犯しちゃいけない暗黙のルールもあるわけで……でも、一次創作ならそんなんがなくて、作者がルールブックなわけで!
文学フリマの存在を知る
そして、2010年代前半あたりに、東京で開催されている文学フリマの存在も知りました。
コミティアとはまた違う感じのイベントなようで、こっちも面白そうだなと。二次創作で参加している、オールジャンル同人誌即売会イベントとは違った楽しさがありそうだなと。
でもこの頃はまだ、東京でしか開催されていなかったので、参加することはありませんでした。
文学フリマ京都へ行く
少し時間が経って、文学フリマが他地域にも展開して、京都でも開催されることがわかりました!
それで、文学フリマ京都へ足を運んだのが2018年のこと。このときはただただ、その場の熱量に圧倒されて、フラフラと会場を回る感じでした。
この時、和装の方が多いなって思ったんですけど、こういうイベントだとちょっと特別なオシャレを楽しむ人も多いだろうし、1月だし、京都だし、自前の和装で来る人が多いんだなーって解釈しましたが……今思えばこれ、和装体験で着付けて貰ってる人が結構多かったのかもしれませんね。もちろん、自前の和装で参加してた方も居ると思いますが。
初めて文学フリマへ行ったときは、自分が出店側にというのはまだあまり思っていませんでした。でも、すごい場所だなって気持ちはあって、また足を運ぼうとは思いました。
一箱古本市から創作へ派生
で、2018年というと、読酌文庫として一箱古本市への出店を始めた年です。長岡天神(京都府)の「天神さんで一箱古本市」への参加を皮切りに、ちょこちょこと出店経験を重ねました。
その中で、一箱仲間とでもいいますか、顔見知りになっていく人たちがいて、ただ箱に本を詰めて売るだけじゃなく、自分の書いたフリーペーパーだとか冊子だとかを配布、あるいは販売している人もいました。それに触発される形で、自分も創作やってみるかって熱が少しずつ高まったのを覚えています。
『はなり亭で会いましょう』の構想
一箱古本市を楽しむなかで、少しずつ温まっていく一次創作の構想。2019年の1月も文学フリマ京都へ行き、そこにある文学への熱量に感化されて、この頃には「来年は文学フリマに出たい!」と思うようになっていました。
でも、『はなり亭で会いましょう』の構想は最初から今の状態だったわけではありません。もともとは、「はなり亭」にやってくるいろいろな人物にフォーカスしていく、連作短編というか群像劇のようなイメージでした。絢子も涼花も、そのなかの一人という感じで(絢子は最初から主役級だったのだけど)、ほかの常連客さんが絡んだりとかも考えていたんです。
同時に、もう一つ、社内恋愛をテーマにしたラブコメの構想もありました。食い道楽なアラサー喪女が、いけ好かないところがあるけど憎めない営業マンに惹かれて、気付けば片思いして、モダモダするお話。
さて、一次創作に挑戦しようかなってなったとき、この二案のうちどちらに手を付けようかと考えました。
……考えたんですけど、なんか、どっちも決め手に欠けるっていうか、いろいろまとまらなかったんですよね。何かが足りなくて、構想がガチッと決まらない状態。
ならばいっそ、この二案を合体させてしまえばどうかと、あるとき閃きました!
絢子にせよ、もう一方のラブコメ主人公にせよ、食い道楽なキャラは被っていますし、二人とも恋愛偏差値が高いといえないタイプ。同じような属性の主人公は二人もいらないから、フュージョンすればいいんです!
そんな感じで主人公の設定が固まって、世界観の解像度も上がり、良い感じに構想がまとまっていきました!
『習作・はなり亭で会いましょう』を執筆
こうして『はなり亭で会いましょう』の構想がまとまったので、2019年の夏に参加した一箱古本市に合わせて、短編を一作書き上げました。それが『習作・はなり亭で会いましょう』です。
noteにもアップしていますが、これを小さな冊子(コピー本)にして頒布したところ、そこそこ良い感触をいただけました。
そして文学フリマ京都へ
執筆しはじめると弾みがつくのか、次々と書いてみたいエピソードが浮かんできました。それで、『はなり亭で会いましょう』を文学フリマ京都合わせで出そうと決意し、出店申込。
小説本で、文庫サイズにしたいから、頁数が多くても費用を抑えられそうなところで……ということで、印刷所はちょ古っ都製本工房さんに決定。この時はとにかく、自分が書いた一次創作を、もっとしっかり形にしたいって思いが強くて、シンプルな装丁で少部数のみ印刷しました。
文学フリマ当日を迎える
年末年始は文学フリマの出店に向けた準備に追われ、慌ただしく過ぎていき、当日を迎えました。文学フリマへは初めての出店だし、頒布物もあまりない状態(にほんしゅにっき、にほんしゅもんだいはありましたけど、今と比べれば並べるものが少ないよね)だったので、ぽんつくさんにお店番協力いただきました。
見本誌コーナーにも、もちろん『はなり亭で会いましょう』を提出。さて、読酌文庫の初出店、どうなる!?
ビギナーズラック発動!?
結果を先に申し上げると、この初出店で『はなり亭で会いましょう』の持ち込み分は売り切れました!
……って言っても、印刷20部に対して持ち込みは10部だったので、10部売り切れたからって威張るんじゃねーって話ではありますけどね。50とか100とか……最近では数百部を一回の出店で売り切っちゃう著名出店者や大手出店者もいるのでね。
でも、自分的には快挙でしてね。
過去に参加してきた二次創作では、そもそもマイナージャンルということもあって、頒布物1種類が10部も売れることなんて、なかったんですよ。頒布数0とか、誰もスペースに来てくれない日もありました……
それなのに、一次創作は初出店でこの戦果!
初出店だし、書き手としての知名度なんてないけれど、それでも当日、来てくれた人の目に留まって、あるいは見本誌コーナーで気になって、買ってくれる人が10人も居たということ。
……そんなん、図に乗るに決まってるじゃないですか!私、チョロい人間なんで。
……ただ、これは入り口からまっすぐ入ったライン上の配置による恩恵と、ビギナーズラックが発動していたのだと、後日思い知らされるのですが……それはまた別の話。
文学フリマと創作への思いは強くなる
こうして無事に、初出店を果たした読酌文庫は、ライフワークとして一次創作での同人誌即売会参加を継続することとなります。
『はなり亭で会いましょう』も増刷して、売れたことに気を良くしたのもあって続編エピソードも浮かんできて、来年には2巻を出したいと思うようになりました。
2024/1/14 文学フリマ京都8にも出店します!
2024年1月14日(日) 京都勧業会館みやこめっせで開催の文学フリマ京都8へも読酌文庫は出店します。
今回は評論・研究のカテゴリーを選んでいますが、既刊の小説やエッセイも持ち込みますので、参加予定の方はお立ち寄りいただけますと幸いです。
読酌文庫は「さ-28」でお待ちしています。