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とつげき隣のヒトハコさん12:お家で古書カフェをオープン「ツルモモさん」

少し間が空きましたが、実店舗オープンを目指して古本市への出店や間借りカフェをされてきた「ツルモモ」さんのインタビューをお送りします。
よい物件が見つかったのを機に、2023年春からは「古本とカフェ・ツルモモ」を自宅でオープンし、自分のお店を活動拠点に据えられています。

純文学から気楽な娯楽ものも並ぶ本棚

お住まいの鶴橋・桃谷にちなんだお名前や場所への思い、これからやってみたいことなどをお聞きしました。


鶴橋・桃谷が屋号の由来

―今日は協力ありがとうございます。一箱古本市などへの出店時の屋号は「ツルモモ」とされていますが、このお名前はお住まいの場所、大阪の鶴橋・桃谷が由来だそうですね。

ツルモモ:そうなんです。一箱古本市の活動や、古物商を取ってWebショップを始めた時期に住んでいた場所にちなんで付けました。
今も桃谷に住んでいますが、元々は神戸生まれ・神戸育ちなんです。それが大人になってから縁あって大阪に移り、今は実家も大阪市内にあるんですけれど、引っ越しを繰り返したなかで2年ほど前から鶴橋・桃谷に住むようになりました。

―何か地域への思い入れがあったんですか?

ツルモモ:鶴橋・桃谷がすごく住み心地の良い街だったので、こちらに移ってきたときに長く住むだろうなという予感はありました。それもあって、活動するときの屋号を地名にちなんだものにするのも縁を感じたんです。

是非ここで古本屋さんとして頑張りたいと思ったのと、これからもここに住み続けたいという気持ちから名付けました。

―この街が活動始まりの地点、という感じなんですね。パッと聞いた感じ「ツルモモ」だと、果物の桃の種類みたいな雰囲気もありますが、思い入れある土地の名前からなんですね。

ツルモモ:少し調べたんですが、クランベリーの和名が「ツルコケモモ」だそうで、植物っぽい雰囲気も可愛いかなと思っています。「モモツル」やと、ちょっとお酒っぽいイメージじゃないですか。

―確かに。お店の飾りにピンクを取り入れているのも、そういうイメージからですか?

ツルモモ:それはちょっとあります。Webショップを始めたときもイメージカラーとしてピンク色を使っていました。WebショップはBASEを使っているんですけど、基本的なデザインから選んで作ったので、そのときに赤に近い濃いピンク色のデザインを選んだんです。

それで、この色をイメージカラーにしていこうと思って、何かしらデザインを考えるときにもピンク色を使うようになり、お店をオープンするときもピンクを使いました。

―ツルモモさんが使われているロゴは、消しゴムハンコで自作されたんですか。

ツルモモ:そうなんですよ。パソコンを使ってというのはできないもので、すごくアナログですが、自分で消しゴムハンコで作ったものを、名刺やSNSアカウントのプロフィール画像に使っています。

今使っているのは実は2代目で、最初のは今Webショップのトップ画像に使ってるんですけど下手くそすぎて。

皆さん、依頼して作られてたりもしますけど、ちょっと予算も抑えたかったので、アナログで自作して、時間あるときにペタペタとハンコを押して名刺も作ってます。

―丸みのある雰囲気もいいですし、自分で作る楽しみもありますよね。

ツルモモ:そうなんです。形は面白いかなと思ってますし、作る楽しさもありますね。エコバッグに押して、オリジナルグッズを作ったりもしています。

Webショップと一箱古本市への出店から実店舗オープンへ

―一箱古本市への参加やお店を開くきっかけは、何かありましたか?

ツルモモ:ずっと本や文学に関わる仕事をしたいと思っていました。パートをしながら、金銭的なコストをかけずに、今の自分でも始められることが、古物商の許可を取りWebショップを始めることと、一箱古本市に出店することでした。

それで2021年の8月にお店のTwitterアカウントを作って、Webショップをオープンして、出店する古本市を探して出たのが11月だったと思います。あまがさきキューズモールの一箱古本市を、Twitterで見つけて参加しました。

肌寒くなるかならないかくらいの時期で、ウールのコートを着て出た記憶があるんですよ。それが初めての出店です。

―よく出店されたのは、どこのイベントでしたか?

ツルモモ:あまがさきキューズモールでの一箱古本市には、一番多く参加しました。

そこから繋がりができていって、みつづみ書房さんやデイリーマザキさんが主催された一箱古本市にも声をかけていただいて出店したことがあります。一箱古本市へはそんな感じでちょっとずつ、出店を重ねていきました。

ただ、実店舗を開店後は、古本市への参加は一旦お休みしています。
イベントは土日祝と重なってしまいますし、お店を閉めて出店するのも悩ましいところです。お店が安定したら出るようにしたほうがいいのか、それともお店を認知してもらうために出るべきか。

主催の方からお誘いをいただいたり、すごく良いイベントで繋がりができて良いよって紹介してもらったりするんです。でも、今はちょっと、お店のことでいっぱいいっぱいかなと思うので、イベント出店よりも実店舗のほうを重視したいなと思ってます。

―なるほど。確かにイベントは土日祝が基本ですからね。一箱古本市への出店のほか、貸店舗でブックカフェもされてたそうですね。

ツルモモ:そうなんです。それも家の近所でやりました。

菜の庭学舎という、私と娘たちも通ってる子育て支援のコミュニティスペースがあるんですが、その代表の方がママたちのキャリアアップ支援として場所を貸すと言って下さって、背中を押してもらいました。

それで2021年の12月に、年末の4日間を使って菜の庭学舎のコミュニティスペースで、古本を販売してコーヒーとお菓子を出すという、ブックカフェをやりました。

4日間のブックカフェで自信がついたので、他にも場所を探してやろうと思い、見つけたのが弥栄神社近くにあるギャラリーKONOMURAです。そこの貸しギャラリーを借りて、土日祝を中心に1年間ブックカフェをやりました。

―そういった経験を経て、実店舗オープンにつながったんですね。では、活動を始めた最初から、最終的には実店舗としてブックカフェを作りたいと考えられてたんですか?

ツルモモ:はい、ブックカフェをと思ってました。昔からお茶を飲みながら本や文学の話をしたり、ゆっくり本を読んだりっていうイメージがあったので、古本屋さんだけをやろうと思ったことはなかったです。

もちろん新刊も取り扱いたい気持ちはありますが、ひとまず自分の蔵書を中心に、コストを抑えてスタートしました。

―カフェをされるにあたって、コーヒーの淹れ方とかお勉強とかされたんですか?

ツルモモ:特別な学校や教室に通ったワケではないんですが、本を読んだり自分が好きなお店に飲みに行って勉強したり、人に聞いたりはしました。

でも、コーヒーを出すお店で1年、働いていたことはあります。上島珈琲店なんですけど、そのときは調理場にも入って、サンドイッチやホットサンド、モーニングの目玉焼きとパンとサラダとか作ってました。

余談なんですけど、上島珈琲店はチェーン店なんで機械で大量に珈琲を淹れるんですが、ちゃんとネルドリップなんですよ。だから、チェーン店のなかでは美味しいコーヒーだと自分では思ってます。

―そういう飲食店での経験もブックカフェにつながったんですかね。

ツルモモ:そうですね。経験もあったから、ブックカフェを始めるのも気楽にできた部分があると思います。

―先ほども近所の方がお見えになられてましたが、もしかしたら、地域の人が集まる場にもなっていくかもしれないですね。

ツルモモ:なれるかな? そうなれたら嬉しいな。住宅地にいきなりお店ができた感じだったので、近所の人はびっくりされて「こんなとこに?」って感じやったんですけど、裏に住んでるおばあちゃんもしょっちゅうお茶しに来て下さったりしてます。

そもそもここは店舗用じゃなくて、住宅用の賃貸物件だったんです。それを、この間取りだったら店舗兼住宅にできそうだなと思って、家主さんに相談したら「いいよ」と言ってもらえて。

だから、この物件を見つけたとき、他の人に取られたくないと思ってオープンを急いだ部分もあります。前に住んでいたところもこの近くでしたし、子どもの校区も変わらずに住むので、1ヶ月くらいで結構急いで引っ越しました。

文学作品や詩集を置きつつさまざまな本を楽しめる店にしたい

―扱われている本は文学が中心とのことですが、特にこの時代・この作家、といったこだわりもあったりしますか?

ツルモモ:最初は自分の好きなものを中心にとか思ってましたが、今はそれほどでもないです。詩や小説、文学といった、自分の好きな作品をコンパクトに置いて色を出しながら、オールジャンルに色々扱う状態が理想かなと思ってます。気楽に読める本も難しい本も、両方あって、色々な本の中から好みのものを見つけてもらえたら良いなと。

ちょっとまだ固まってない段階なんですけど、お客さんからは何か雰囲気を感じ取ってもらえてるみたいで、好みが多少出ているんですかね。

でも詩集とかはもう少し揃えたいです。茨木のり子さんの本とか、置いてるとすぐに売れちゃうんです。吉村萬壱さんの本も結構あったんですけど。そういう推してる本はくり返し仕入れるようにして、お店に置けたら良いなと思います。

―お店をされてみて、何か感じたことはありますか?

ツルモモ:最初は本が好きでブックカフェを始めたんですけど、本だけにこだわらなくても良いのかなって思い始めてます。

アンティークの布とか、アロマや香水も好きなので、何か自分の好きなものをちょっと仕入れて、一緒に置いても良いかなとか。知り合いの方が作られてる作品を販売したり、レンタルスペースにして物販したり。

できる範囲のもので用意して、使わせてもらってできたお店なので、無理のない範囲で他にも何か広げられることがあればいいなと考えてます。

言葉を声にして味わう会を企画

―本を売ること以外で注力している活動や、これから挑戦してみたいことはありますか?

モモツル:元々、本を読むのと文章を書くのが好きで、頑張って小説を書いていた時期もあるんですけど、これからはエッセイを書きたいなと思っています。

本屋をやってて感じたこととか、子育てのこととか、自分の考えを文章で表現して、エッセイみたいな形にしたいです。文章はずっと書き続けたいですし、書いたものは誰でも見られる形にして残せたらと思ってます。

―一箱古本市でも、フリーペーパー作って配られてる方も多いですからね。

ツルモモ:皆さんよくされてますよね。私あれ、いつも間に合わなくて用意できなかったんですけど。今はお店と仕事とで文章を書く時間が少なくなっちゃってるんですが、将来的にはしっかり時間を作って、できれば紙媒体で形にしたいですね。

それから、書かれた言葉を文字で読むだけでなく、声に出して読み、それを皆で聴いて味わう会をしたくて、先日企画しました。

―8月に募集して開催されてましたね。1回目をやってみて、どんな感じでしたか?

ツルモモ:すごく楽しかったです。今回は初めてだったのもあって女性限定にしたんですけど、だからこそ参加された方同士が話しやすい雰囲気を作れた気がします。

私を入れて4人で始めたんですけど、1時間半から2時間くらいで、1人あたり5分程度の持ち回りで2周回せました。
また、折を見て企画したいです。

出店仲間の方たちは素敵な人がいっぱい

―活動の中で目標にしている人、憧れている人はいますか?

ツルモモ:古本市出店仲間の皆さまは全員、個性があり、センスもよく、素晴らしい本屋さんです。

文学や哲学、詩や美術、歴史やノンフィクション、絵本、漫画、色んなジャンルを、箱主さんの核となる精神性から選んで揃えているな、と感じる出店者さんには、魅力を感じます。「これ!」という一つのテーマを追求している箱主さんにも、魅力を感じます。

後記

インタビューの申込みをした直後あたりから、実店舗オープンに向けてお話がまとまっていったようで、少し落ち着かれたタイミングでお話を伺いに行きました。

カフェではオーガニックコーヒーや紅茶などを提供されてます

大家さんご夫婦もお茶をしに来られるなど、ご近所からも親しまれる場所になりそうなお店です。

Webショップもオープンされているので、ぜひ覗いてみて下さい。

今回のヒトハコさん

屋号:ツルモモ/@TsurumomoOsakaWebショップ
実店舗は大阪市生野区桃谷2-7-3
 営業時間:平日14時半〜18時、土日祝13時〜18時、定休日(月・火)
活動PR:ひとりでゆっくり読書にも、お友達同士でお茶をしながらおしゃべりにも、本を探しに来ていただくだけでも、本や文学について語り合いた方にも、気軽に立ち寄れて、くつろげるお店を目指しています。

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読酌文庫/朔
果てしない自由の代償として、全て自己責任となる道を選んだ、哀れな化け狸。人里の暮らしは性に合わなかったのだ…。