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インタビュー記事を書く仕事もしてみたくて企画を立ち上げた

私は現在「とつげき隣のヒトハコさん」という名称の、個人的なインタビュー企画をnoteに連載している。

この企画は、一箱古本市や貸し棚書店への出店など、“一箱単位で本売る活動をする人”を「ヒトハコさん」として話を聞く企画である。
(なかには古書店を経営している方や、書店開業を考えている方もいるが、その人達も含めて「ヒトハコさん」として取材している)

#やってみた大賞」への参加も兼ねて、この「とつげき隣のヒトハコさん」企画をやってみたことについて書き綴りたいと思う。

インタビュー企画に取り組むにあたっての不安

インタビュー記事を書く仕事をしてみたいと考えていたが、何の経験もない状態で
「インタビュー取材します!インタビュー記事書きます!」
と手を挙げるのは無茶が過ぎると思われた。
だから、何らかの方法でインタビュー経験を積まねばと思い、個人的な企画をスタートさせたらどうかと考えていた。

しかし、インタビューそのものに対しても不安があり、私は長らくスタートさせられないでいた。

  • インタビュー対象とちゃんと話ができるか

  • 聞き出した内容を文字に書き起こせるか

  • 相手に負担をかけてしまわないか

不安に感じたのはこの3点だと思う。私はある程度、事前準備を整えてから動き出したいタイプであるため、考えすぎて動けなくなるパターンも珍しくない。

インタビューライターになれたら……と思う気持ちはあったものの、それに繋がる一歩を踏み出せずにいた。

だが、何もしないままでは現状維持か疲弊してジリ貧になるかのどちらかであろうし、やらないで後悔するよりは……ということで、今年に入ってようやく重い腰を上げる。

そして、実際にインタビューをやってみて、不安に感じていたことはおおむね杞憂であったと実感した。

実際にインタビューをしてみて感じたこと

インタビュー企画をはじめるにあたって、不安に感じる3つの事柄があったのだが、今のところ大きな問題はなく、楽しく企画を進行できている。

インタビュー記事を書くなんて、これまでやった経験もないし、何のスキルもない自分がそれを仕事にしたいと考えるなんておこがましい……と、どこかで感じていた。
しかし、過去の自分の仕事内容を振り返れば、インタビューに生かせる経験もあったのではないかと思えた。

それは「クレーマーからの電話対応」である。

一見、関連性の見えない仕事内容なのだが、相手の話を聞いて要点をまとめ、確認して、担当者に伝える(情報として公開・共有する)という部分に着目すると類似性がある。

それに、クレーマーと対話するよりインタビューをする方が、精神的な負担が少なく、楽しい時間となった。

これはクレーマーとの対話が無益であるとか、電話対応の仕事が非生産的であるとか、そのような意図はないのであしからず……あくまで個人の経験談として、比較するとインタビューは楽しくできるものだったと言いたいだけである。クレームと向き合う業務も、事業を続ける上で必要かつ重要な意味を持ち、その業務に関わる人も大切な存在だ。過去の私を含めて。

インタビュー対象は話しやすい人ばかり

インタビューをしたい相手へのアポ取りは「断られたら……」と、少々逃げ腰になっていたが、「とつげき隣のヒトハコさん」では事前に関連するツイートに「いいね」を付けてくれていた人からあたるようにしていたので、むげに断られず話を進められた。

基本的にみなさん、乗り気であったし
「大した経験もない私で良いんですか?」
「面白い話とか出来ないと思いますけど……お力になれるのなら」
「面白そうですね!でも、上手く話せるか緊張しますね」
という感じで、むしろ恐縮されている雰囲気すらあった。

私もそれなりに緊張しつつ、インタビュー当日を迎えた。話し始めてみると、みなさん自分が興味を持って活動している内容についてであるため、楽しく語ってくれた。
(これは私が主観的に感じた部分なのだけど)

だから私も安心して相手の語るストーリーに耳を傾けられ、聞き取った内容を確認しながら話を広げられた。ここで、電話対応に追われていた日々の対話力がいくらか役立ったのである。

クレーム電話への対応にも、相手の話を遮らず、言いたいことを聞き出すのが重要だ。声の調子や発言の間からも、感情や考えを予測して、話の本質となる部分を聞き出す。心が折れそうになりながら対応してきたクレーム電話だったが、インタビュー時の対話においても経験が生きたとあって、少し救われた気がした。

それでいて、インタビュー対象はこちらに対して友好的な態度であるから、話を聞くだけでストレスに感じる心配がない。クレーム電話だと、攻撃的な発言やキツイ物言いも受け止めないといけなくて、少々心が病んでしまったけれど、インタビュー時の会話には、そのようなリスクはなかった。

録音データは聞き直せるし再生速度も変えられる

インタビューで聞いた話を文章に書き起こせるのかという不安も、気にするほどのことはなかった。

そもそも、事前に承諾を得て録音しているし、文字起こしや記事化する際は、何度でも音源データを聞き返せる。聞き逃しても巻き戻して再生でき、聞き取れないなら再生速度を遅くしてもいい。

音声データからの文字起こしは、それなりに時間のかかる作業なので、もしも今後、本格的にインタビューの仕事を数多くこなすのであれば、文字起こしアプリの導入や外注も検討すべきだろうが……今のところは、自力で何とかできている。

録音データを振り返りながら、落ち着いて話をまとめられるので、クレームを聞いてその場でメモにまとめるより、ずっと難易度が低い。

私が勤めていた場所では、外線対応の録音保存をしていなかったから、相手の発言をその場で正確に聞き取って理解し、文字に書き起こす必要があった。

もちろん、聞き逃した点は電話対応しながら聞き返せば良いのだが、頻繁に聞き返すのはクレーマーの苛立ちを増長させる。
「お前は私の話をちゃんと聞いていないのか!」
とさらなる怒りを買いかねない。

だから、聞きながら、相手の発言を理解しながら、要点を書き起こしながら、相手の感情に寄り添った相槌を打つ……複数の作業を確実に同時進行しなければならない。
これはなかなか、ハードであった。
しかも、相手は怒っていたり、苛立っていたり、憤っていたり、こちらを攻撃して愉しんだりしているのだから、こちらの負担は甚大である。

インタビューでは落ち着いて内容を聞き直しながら文章に書き起こせるので、思っていたほど難しい作業には感じなかった。

相手の負担については検証の余地あり

インタビュー企画につき合わせるのが、相手の負担になっていないかについては、まだまだ検証の余地があると実感している。

もちろん、みなさん快く引き受けてくれているのだけれど、それに甘えすぎてはいけない。趣味の延長として取り組んでいる企画とはいえ、相手の時間を使わせていることには変わりないのだから。

なるべく負担をかけない方法で対応したいと思うし、有意義な企画になるようこれからも進めていきたい。

チャレンジしようと考えはじめてから時間がかかったワケ

インタビューライターを目指すにあたって、何らかの方法でインタビュー経験を積んだ方が良いだろうと考えていたが、実際に動き出せたのは今年になってからだ。

インタビューに関する不安のほかに、どんなテーマの企画を立てれば良いかまとまらなかったのもある。

はじめの頃、お気に入りの飲食店を取材する……というのも考えたが、いきなり
「取材させてください!」
と、お店に持ちかける勇気はなかった。
「私はライター業をしてまして云々……つきましては、店主の方のインタビューを個人的にやりたいと云々……」
と、話を切り出すのはとても難しく感じられた。

だって、お店側からしたら「時々来てくれるお客さん」程度の認識だった人から、突然そんなこと言われても困らせてしまいそうな話だし。
それに、インタビュー対応したところで、有名なメディアに載るとか雑誌掲載されるとかじゃないから、宣伝効果は皆無。個人的にやっていることだから、せいぜいその日の飲食代程度しか支払えないし、謝礼なんてとてもとても……と、このようにお店側にメリットのないことを頼み込むのだから、難しく感じて当然だろう。

となると、インタビュー対象は、もう少し自分と近い間柄の相手となってくる。こんなとき、実業家の友人とかベンチャー起業興した友人とかデカい夢を追ってる友人とかがいれば良かったのかも知れないが……残念な交友関係の自分が悔やまれる。

そんなこんなで、長いことうんうん考え込んでしまったのだけど、よくよく自分を振り返ってみたとき、趣味の活動に関連する人たちなら、多少声もかけやすいのではないか?と気付いた。

リアルな交流はほとんどなくても、SNSで繋がっていて、イベントで会うこともあるから知らない仲でもない。面白いなと思うことをしている人もたくん居る。
そういう人たちの魅力を発信するきっかけにもなれば、面白いのではないか?

こうして「とつげき隣のヒトハコさん」の企画内容が固まっていった。

「とつげき隣のヒトハコさん」をはじめた動機(純粋な想いと不純な私欲)

企画内容が固まり、正式に動き出した「とつげき隣のヒトハコさん」だが、活動動機には純粋な想いと不純な私欲が入り交じっている。そこに対して私は、常に負い目を感じている。

純粋な想い」は、箱単位で本を売る活動の面白さをもっと多くの人に知ってほしいし、そんな活動をしているユニークな人たちを紹介したい、というもの。また、私自身がそういった活動をしている人のことをもっと知りたい、というのもある。

不純な私欲」は、インタビューライターを目指して経験を積みたい、という点だ。一見、建設的な活動をしているようだけれど……言い換えれば、私は趣味で関わってくれている人たちの善意を利用して、踏み台にして、自分の仕事に繋げよう、お金儲けできるようになろうと考えているのだ。

そんな自分が少し、後ろめたい。できればもう少し、胸を張って企画に取り組みたいのだけれども。

インタビューライターとしてはまだまだ、これから…

こうして趣味で立ち上げたインタビュー企画「とつげき隣のヒトハコさん」がスタートし、大切な一歩を踏み出せた。自分の中で「インタビューする」ということへのハードルが下がったのはとても大きい。

「とつげき隣のヒトハコさん」自体も、これから続けていく予定なので、回を重ねるごとにブラッシュアップしていきたい。それに、これとは違うテーマのインタビュー企画も取り組んでみようかとも考えはじめている。

しかし、肝心のインタビューライターの仕事を受けられるようになるかは、これからの話である。

はたして、この趣味ではじめた企画の記事をサンプルとして提示して
インタビュー対応できます!インタビュー記事書きます!
という売り込みは成立するのか?

しょせんは趣味。
お遊びで書いた記事。
仲間内でやってるインタビューごっこと取材記事は違う。
仕事として依頼できる品質にはほど遠い。

そんな厳しい見方もされるのではないかと思う。
それを考えると……企画をやってみて、前向きに進み始めた気持ちもいくらか萎えてしまう。だが、私はそれを奮い立たせないといけない。

やってみた初めの一歩は、自分に大きな変化を与えてくれたけれども、これからも歩み続ける努力がなければ、望む結果には繋がらない。まだまだ、私の思い描く場所にたどり着くまでの道のりは遠いのだ。

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読酌文庫/朔
果てしない自由の代償として、全て自己責任となる道を選んだ、哀れな化け狸。人里の暮らしは性に合わなかったのだ…。