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祈り、なんてね

ここは大阪、梅田ラテラル。わたしはここでとある事件を目撃する。そう「松永天馬殺人事件」!

 松永天馬殺人事件という映画はいったい何なのか。ちりばめられたたくさんの言葉遊び、松永天馬による盛大な自慰行為、プロパガンダビデオ、映画のための映画 etc…やりたいことはたぶん、古いもののオマージュ。だけど一貫しているのは、“今”だということ。皮肉っぽく今を描くのがてんまさんらしい。そして、それもすでに過去になってしまっていると自覚的であるのがまた良いです。
 わたしは、普段そーゆー系の映画をまったくみないのでもとにしてるであろうものたち…寺山修司とか、わからなくて…そもそも邦画をほとんどみない…。いつも洋画のアクション映画とか、子供向けのファンタジー映画とかばかりみるので新鮮なきもちでみることができました。元ネタを知らずにいろんなものの良さを松永天馬から吸収している。なので、こういうnoteを書くと本当に自分の教養のなさがわかってしまって、かなしい!
出来の悪いこの脳みそにもっともっと知識をつめこめたいな。

 わたしはなにかしらの境界線がぼやけ、あやふやになっていくシーンが好きです。今敏の作品とかすごいなあと思います。夢と現実、自分と他人、過去と現在…そして、スクリーンの向こうとこちら…。没入感があってぞくぞくさせられる。松永天馬殺人事件もこういった不思議な構造になっていて、メタ構造?メタ映画?メタフィクション?でメッタメタの滅多刺しなんです。めためたメタい!いや、てんまきゅんメロい!
 全然ちがうところの話であれなんですが、newjeansのOMGという曲のMVでダニエルちゃんが「MVの撮影中でしょ?」といって撮影スタッフさんたちがいる“MVの外側”が映し出され、「そうですよね?」と外側に出ていき、MVのなかでこれがMVだということを確認するシーンがあるのですが…!なんか、こう、うわーっ!てなるんですよね。OMGは現実や妄想が交差しているストーリーで、全体的にふわふわしていて不穏でグッとくるんです。現実という言葉が指すものはひとつじゃないんですよ……。
 つまり、MVの中でMVについて言及しMVの外側にでていくも、それもまたMVの中ってわけなんです。話が遠回りですね。で、松永天馬殺人事件も映画の中で映画について言及し映画の外側にでていくも、それもまた映画の中、であり映画は客席にまで拡張して現実を侵食していったのです!! わたくしは寺山修司ではなくnewjeansを思い出すんですよ…そうです。あなたが小馬鹿にしたように言っていた、エヴァをサブスクで見る時代のガキなんですよー………。
 ああ、驚異の上映システム 4 DIE X、おそるべし。そしてここもまた映画の延長線上、映画のワンシーンなのかもしれないのだ…。何度境界線を跨いでも、現実に戻っていない気がする。わたしがいた現実はほんとうは映画の中にあって、じゃあ映画のはじまりはどこからなのか? 頭がおかしくなったふりをして松永天馬殺人事件のことをいつまでも考えています。何故か。それは別の世界線にわたしが飛んだから。
Kwsk…

 映画をみているわたしは2度、境界線、スクリーンを跨ぎます。それは、引き込まれて思わず前のめりになってしまうあの瞬間。頭のなかが空っぽになって映画だけが頭に流れ込んでくるあの感覚。もしかすると、つまらなくてうとうとして目の前がだんだんぼやける時かもしれない。わたしはスクリーンの向こう側へ足を踏み入れているのである…。
 この時わたしはすでに今までのわたしではなくなっている。実は境界線を跨いだことによって分岐点が生まれているのだ。そう!マルチバースに飛ばされている…。もう、松永天馬殺人事件を見る前のわたしには戻れない!もとのわたしに戻れない!!完全に頭を侵略されてしまったようです。たすけてほしいよ。
 2度目はやはり、映画が終わってしまうときでしょう。ふわふわした夢のような世界から現実世界に戻る時、境界線を跨ぎます。余韻に浸るまもなく、あたりが明るくなる。ああ、終わったんだ。と残念なきもちと安心した気持ちになります。
しかし、松永天馬殺人事件はここでは終らなかった。拡張し、侵食しながら映画は続いているというわけなのです。
 わたしたちが現実世界だと認識している“ここ”は、ほんとうにカメラがまわっていない、台本のない世界なんでしょうか。目の前にひろがる空間にナイフを入れて…薄い膜を破るように、切り裂いて……みると、ナイフがスクリーンを突き破り、切り裂き、外側が見える。

 なにが見えるかな。ああいやだ。見たくない。わたし、ヒロインになれずにエキストラなんでしょ。だってほら、真犯人はわたしじゃなかった。

わたしの殺意にカメラは向けられなかった。

終劇

…といいたいところだが、やっぱりわたしの映画の主人公もヒロインもわたしじゃないと。だから、とびきりかわいい格好で気合いをいれて、また会いに行く。殺意を隠して☆ミ

唯一無二の存在でいてくれてありがとう。
これからも。