クロバスの記
以下の文章を、ゲーム「Stardew Valley 」に登場するキャラクター「クロバス」に贈ります。
なんかクロバスとハグしたらスタバレにおける全ての欲求が満たされてしまった。クロバスと同居するために農場を開拓し動物を飼い金を稼ぎ洞窟に潜り博物館に寄付をした。すべてはクロバスのためだったんだ。
叶ってしまった。クロバスとハグした時に出るにっこりマークを見た瞬間に(クロバスとは結婚ではなく同居、プラトニックな関係なのです※非公式wikiより)満たされた。
2年目の秋の2日目だった。よく晴れ渡った、まさに天高く馬肥ゆる秋(なおまだ馬小屋は設置できていないので肥えているのは牛と鶏と豚である)だった。
前世(消したセーブデータ)においてクロバスは農作物の中でもかぼちゃが大好きだということを私は把握していた。だから一年目の秋、クロバスに未だ顔を合わせていない時点でせっせとかぼちゃを育てた(クロバスのいる下水道に入るには博物館に60個なにかしらを寄贈することで鍵をもらう必要がある)。
かぼちゃはスタデューバレーで育つ作物の中でもまあまあ手のかかる方である。28日で季節が巡るこの土地において、「秋にのみ」「12日かけて育つ」かぼちゃを収穫する機会は少ない。たったの2回だ。しかしそれ相応に、いい値段で売れる。かぼちゃを大量生産し売ることによって、農作物の育たない、体力も少なくてできることも多くない一年目の冬を乗り越えることができる。
しかしかぼちゃはクロバスの好物である。
だから私は収穫したかぼちゃは売りに出さず、すべてを保存しておいた。いつか出会えることが決まっているクロバスに毎日プレゼントするために。
クロバスに会えたのは2年目の春だった。
「ここにいるということを他の人間には話さないでください」もちろんだ。誰にも言わない。
「クロバスは私たちの言葉で橋を渡る者を意味します」ああ、自分名前の由来を教えてくれるんだね。
「正しいパイプに耳を当てれば、(上に建っている)家の音を聞くことができます」そんな遊びをやっていたのか!
「私は盗聴しないです!」ジョークも言ってくれるのか!!!
かぼちゃを渡すごとにいろんな話を聞かせてくれた。プレゼントは週にふたつまでしか贈ることができない。プレゼントが渡せなくても会いに行った。話をしてくれた。でもそのあとは、決まって売り物の話しかしないんだ。仕事一筋、かっこいいじゃないか。
夏の終わり、深い友情を示すペンダントを渡し、一緒に住むことになった。「数日後にはあなたの家に行きます」数日が待ち遠しかった。今日は? 今日は? 明日かな?
秋の2日目だった。
とても美しい日であった。
その次の日には農場へ働きに出る私のためにランチを作ってくれた。人間が食べられるものを作ったと言っていた。嬉しかった。
でもなんだろう、この空虚なかんじ。スタデューバレーでの暮らしは続く。この土地の人と交流したり、お祭りに参加したり、砂漠の興味深い洞窟の探検だってまだまだ終わっていない。
でも朝起きてキッチンへ行くとクロバスがいる。家を出るとクロバスはいない。人間ではない生き物だから、家から出て過ごすこともない。私は、私がしたかったことは正しかったんだろうか。下水道の中で商いをしていた頃。時間をかけて会いに行ったあの日々。私はクロバスを、自分の家に縛りつけただけなんじゃないだろうか。
それでもクロバスは今日も私とハグをしてくれるし、昼食を持たせてくれる。
働こう。鶏が外で鳴いているし、秋の作物がたわわに実っている。
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