小市民の星の終わり~240430摂取コンテンツ日記
米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』創元推理文庫
思い入れのある本である。米澤穂信の小市民シリーズを初めて読んだのは中学三年生か高校一年生のころのことで、当時の私は犬以下の共感性と人間の感情に対する無理解さしか持ち合わせていなかったから、小鳩くんが何に苦悩し、小佐内さんが何を我慢しているのかちっとも理解できなかった。『春期限定イチゴタルト事件』に始まるこのシリーズを貸した友達は『秋期限定栗きんとん事件』を読み終わった後に「この続きはないの?」と言ってきた。「続きはきっと出る筈に違いない、楽しみだよね。読んだら貸すね」とと答えて、それからもう10年以上が経ってしまった。その友達とは全く連絡を取らなくなってしまって、たぶんあの子は「冬期限定はいつ出るの?」と私に訊いたことも忘れているだろうと思う。
そんなシリーズが終わりを迎えるのは寂しくもあり嬉しくもある。終わりなんだろうか。季節限定なだけで、20年くらい後になって続きが出たりしないだろうか。春期限定も夏期限定も秋期限定も、本がボロボロになるまで読み返して、そのうえで感情の流れを全く理解できなかった。今読んだら私はどう思うのだろう。
会社で退勤ボタンを押したのが17時、駅までの道のり途中にある本屋でこの本を買ったのがたぶん17時半ごろ。それから電車に揺られながら読み始めて、ほんのつい先ほど(20時50分だった)読み終えた。こんなに読書に集中したのは久しぶりかもしれない。それくらい楽しくて、だけどどんどん残りのページが減っていくのが寂しくて、それでも先が気になってページをめくる手は止まらなくて、それで、読み終えてしまった。物語の終わりはいつも寂しく、また、優しい。ビターチョコって感じだね。
瀬野反人『ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~』KADOKAWA
ゲームレビューのお金が入ったのでホクホクで気になっていた漫画を買った。フィールドワークで整理のない男性ってめちゃくちゃ有利でうらやまし~と思った。「私がしていたのは理解ではなく解釈だったのだ」という語について今日は一日ずっと考え続けていた。知覚したものに解釈を施すのは生き物が生きていくために必要な行為だけど、いや待って、そもそも知覚それ自体がなんかこう純粋なものではなく「解釈」なのでは? ウンウンウ~ンなど。思っていました。三次元状の文字の存在が示唆されたところまで読んで「三次元の文字! めちゃくちゃワクワクするねえ!」と思った。思いましたとさ。
三津田信三『赫眼』角川文庫
なんか短編集として全体のまとまりがなくどったんばったんしていたけれど、電話口の会話をこう(何を書いてもネタバレになってしまうので何も言えないんだけど)、こうね! 文章の形で表現されたホラー作品で「ゾクっ」を感じたのはこれが初めてかもしれない。Eさんの話も怖くてよかった~夜中トイレに起きた時「あれがいるかもしれなくて隙間や扉の開閉音に怖がる」を久しぶりに体験できたのでとてもいい経験でした。やっぱホラーは日常に影響が出てこそよね!!!(私はそう)
朝里樹、裏逆どら『21世紀日本怪異ガイド100』星海社新書
なんかこう「俺もう何の文字も読めんよ~でも文字を読みたいよ~」って状態のときにめくれる絵本的なものとして買った。知っている話が出るとちょっと嬉しくなる。
萩原朔太郎『猫町』青空文庫
開始数ページで「近所の散歩飽きちゃったな~旅行も飽きちゃったな~いつもと違う散歩体験をしたい時はクスリ! 大麻でラリった状態で散歩するとわけわかんなくてサイコーだよ! でもそれやり続けてたら体壊しちゃった……どうしよう……」との記述があり、めちゃくちゃ面白かった。それはダメだろ! 時代を感じるね。
その他日記
小市民シリーズ完結しちゃったね……完結しちゃったのかな? 完結しちゃったんだろうな~!
GWはまだ後半が残っているのでこの調子で積読を消化していきます。じゃまた。
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