「文章は人間らしさが出ると、面白くなる」と、中学生が教えてくれた。
ふだん絵本講座を開催しているわたしが、
「中学生の作文コンテスト」の
下読みをする機会をいただいた。
全国から応募のあった作文だ。
とにかく、発見が多く面白い体験だった。
担当した50作品をまとめて一気に読んでみると、
数作品読んだだけでは気づけないことが見えたので、
3点にまとめてみた。
① 具体的なエピソードがないと怖いくらい同じに見える
5作続けて、「部活」の話。
しかも、まるでテンプレートがあるみたいに、同じフレーズで同じ展開。
「またこのパターンか」と、思わずため息が出てしまう。
中学生にとって「部活の話」は、書きやすいのは分かる。ドラマもあるだろう。「部活の話」が悪いわけじゃない。
ただ、あまりにザックリ過ぎなんだと思う。
もっと、具体的に書いてくれたら、いいのに。
そこが、きっと面白いはずなのにと思う。
例えば、具体時に書いて欲しいのは、こんなところだ。
■「練習を頑張る」とは、どれくらい頑張るのか。
筋肉痛で腕が上がらないくらい?
お風呂にも入らないで寝ちゃうくらい?
声が3日でかれるくらい?
■「仲間」って、どんな子なのか。
いつもは仲良くない子?
さぼってる子?
存在感のない子?
具体的エピソードがなくて、一般論だと
怖いくらいどの作品も同じに見える。
どう考えたって、バレーボール部と吹奏楽部では、違うことをやっているはずなのに。
かぶりがちなテーマを選ぶなら、自分の体験をしっかり描写して、
読み手に想像できるくらい、ありありと見せて欲しい。
でなければ、みんなが書くテーマは避けるほうがいい。
➁ 心の揺れ動きを素直に書けば、それだけで面白い。
そんな中で、思わず笑っちゃういい作品もある。
字が汚くて、誤字脱字も多い。
だのに、先が気になる。惹きつけられる。「この子、好きだな」とも思う。そんな作品がある。
それは、心の揺れ動いた出来事を、カッコつけないで、そのまま書いてる作品だ。
内容をここには書けないけど、例えばこんな感じ。
些細な出来事だけど、絵が浮かぶし、気持ちもよくわかる。
一方、中学生ともなれば、
環境問題や人権、SDG’sなどの社会的課題を扱った作品もあった。
でも、まるで社会の教科書を読んでるみたい。
ほんとうに気持ちが動いていないことが、透けて見えてしまう。
テーマが社会的だから「いい作文」なのではないし、
読み手は、正解を知りたいわけじゃない。
ひとりの人間がどう感じ、考えたのかが知りたい。
それが文章としても、面白いのだ。
➂ うまくいったことより、ダメなことのほうが読みたくなる
「うわっ、うまいなあ」思わず唸ってしまう文もあった。
中学生でこれが書けちゃうのか。
心底うまいし、ちゃんとしてる。
だけど、「面白いか」と聞かれると、ちょっと口ごもってしまう。
仮に、もし、ブログだったら、読者登録するか。
もし、クラスにいたら、仲良くなりたいか。
中学生にないものねだりしているのかもしれないが、
綺麗に整いすぎる気がしてしまう。
うまくいった話より失敗談のほうが、明らかに心が動いた。
人って、ダメだけど一生懸命な姿を応援したくなるのだ。
そして不思議なことに、
ダメな自分の姿を客観的に書けることのほうが、成功をこれ見よがしに披露している文より、精神的に成熟しているようにも見えてきたりした。
中学生の作文だけのことだけじゃなくて
ここまで書いてきた3点。
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① 具体的なエピソードがないと怖いくらい同じに見える
➁ 心の揺れ動きを素直に書けば、それだけで面白い。
➂ うまくいったことより、ダメなことのほうが読みたくなる。
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小中学生が作文を書くなら、ここに気をつけてみるといいと思う。
この「中学生の作文」で見つけた3点は、
大人が綴るブログでも、まるっきり同じことが言えると気づいた人も多いだろう。
書きながら「これって、わたしが気をつけることじゃん」と自分に突っこみを入れた。
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