【3分間のショートストーリー】僕が頑張る理由
いつからか僕は自分に呪文をかけるように、
「頑張らないと」と言い聞かせていた。
いつからだろう。
頑張らなきゃいけなくなったのは。
いつからだろう。
頑張ろうと決めたのは。
僕には5つ下の弟がいる。
僕が中学生だった頃。
母ひ僕に嬉しそうに言ったのを覚えている。
「ヒロが学校の授業で尊敬する人は誰って聞かれて、何て答えたと思う?」
「いないって答えたんじゃない」
僕の弟はそういうところがある。
素直に答えない。
「お兄ちゃんって言ったんだって」
「はぁ?」
と言いつつも僕は嬉しかった。
そんなことを思っていたのか。
僕ら兄弟は大人になった今でも仲がいいと思う。連絡こそあんまり取らないが。
僕は昔からずっとお兄ちゃんで、
弟にはカッコいい背中を見せ続けないといけない。カッコつけないといけないんだ。
そのカッコつけないとがいつからか頑張ろうに変わったんだと思う。
やれやれお兄ちゃんは大変である。
でもだからこそ意地張ってでも頑張り続けられるし、折れないでいられるんだろう。
その存在だけで僕の気持ちはたっていられるんだろう。
ちなみに僕の尊敬する人は、
昔から今も変わらず、
オヤジである。
優しくて、文句も言わない、絶対に味方でいてくれる安心感。
僕はオヤジの背中を追っかけている。
このままいったらオヤジが先に死んで、
一生追いつくことのできない背中になりそうだ。
僕も弟には追いつかれたくはない。
やれやれお兄ちゃんは大変だ。
それが僕の頑張る理由だ。
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