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My Films in 2021

感覚的にはまだ3月ぐらいなのですが、12月ももう28日ということで2021年がもう終わりそうです、信じられません。ほんとに5月とか6月とか10月とか存在してました??

存在してたかしてないかといえば、こちらのnoteも存在していないかのようにサボっており、9月から1本もアップできていない状態でしたが、年の瀬に爪痕を残して来年に繋げていこうと思います(ほら、やっぱ10月なんてなかったぽくね?)。久しぶりなので柔らかくいきたいので、今年映画館で見た印象に残った映画たちを某映画ログアプリを参照しながら振り返ることにします。ネタバレには気をつけながら書きますが、うっかり書いちゃってたらごめんなさい!それではテンポよく鑑賞した順にいってみましょう!

すばらしき世界

年明け1発目の映画だったんですが、ああこれが今年ベストなんだろうなって思うくらい良かったです。是枝監督の弟子、西川美和監督が元受刑者の社会復帰の困難さを描き出すストーリーです。社会構造の残酷さと、それでも希望を与える人間個人の善意をとても上手く表現し、そのもどかしさは観ているこちらにも感じさせるくらい伝わってきましたし、考えさえられました。また、主演の役所広司はもちろん、脇を固める俳優さんたちも素晴らしくて、特に北村有起哉とキムラ緑子がバッチリハマってました。圧巻はラストシーンです。その余韻は1年間しっかり残り続けていましたね。


あのこは貴族

門脇麦演じる東京のいいとこのお嬢様と水原希子演じる地方から東京へと夢を追って出てきた(逃げてきた)女性の、その非対称な階級差をまざまざと描いた物語。皆平等で生まれの階級差なんて無いようにされている日本の無階級神話を色んな角度から殴っていきます。同じ日本の中でも「クラス」が違えば、食べる物も違うし、触れていく文化も違う文化資本格差も描けていて、別世界に生きているリアリティを描き出しています。良かったなと思う点は2人を単純な二項対立に落とし込むのではなく、それぞれの人生の複雑さを丁寧に対比させている点と、そして2人とはまた違った属性、階級の人物も登場して更なる高低差の広がりを感じさせる点ですね。あと水原希子が地元に帰るシーンがあるんですけど、そこもめっちゃリアル。よくありがちな、「やっぱ地元は良いよなシーン」が無い。全く救いがない。でも、これがある意味実態で、やれ地方創生だとか、やれふるさと納税だとかで描かれる綺麗な田舎は無いです。どこぞのリアリティショー()なんかよりリアルなんじゃないですかね。

逃げた女

結婚して以来5年間ずっと旦那といつでも一緒だった女性がその旦那が長期出張に出かけた際に、かつての旧友たちの家や仕事場を訪れて再会して、ただ飯を食って喋ってという特に何も起きないシーンを3回繰り返す、ホン・サンス監督の映画。ほんとに特に何も起きない静かな映画なんだけど、同じようなシーンを繰り返すことによって見えてくる差異はまさにジル・ドゥルーズの「反復と差異」概念を表現しているのかなーと。あと『逃げた女』ていう題だけど何から「逃げた」のか、誰が「逃げた」のか、明確な答えは提示されないので、観た人それぞれが違う答えを用意できるんじゃないかと思いました。主演のキム・ミニは『お嬢さん』で観た以来でしたが相変わらず上手さでした。

アウシュビッツレポート

アウシュビッツビルケナウにおける被収容者が脱走して収容所の実態を外にレポートした実話。この映画はその実話の過去を眺めるのを目的とするのではなく、ひたすらに「現在」を考えさせるものだと思いました。冒頭シーンの文と首吊りシーンの「イェーイ帰ってきたぞ」のカード、そしてエンドロールの現代ポピュリストたちの演説。これが何よりもこの映画が他のホロコースト関連映画との違いかもしれないですし、そこへの警鐘なのでしょう。内容はそれほどドラマ性にとんではいません。もっとドラマ性を持たせることもできたし、残虐性や暴力をもっと際立たせることができたと思うけど、あえてしなかったのだと思う。それでも十分にそれらは伝わってきたけど。夏頃にこの映画と他2本ほどホロコースト関連の映画(『復讐者たち』、『ホロコーストの罪人』)見たけど、これが一番良かったかな。

モロッコ、彼女たちの朝

イスラム社会ではタブーとされる未婚の母になりそうな臨月の若い女性がモロッコ・カサブランカの旧市街地を彷徨い、それを見たパン屋を営む夫を事故で亡くした女性が嫌々匿ってあげるところから始まる物語。この作品も女性が抑圧されている社会構造を描いてくのですが、単なる男女の二項対立に落とし込まない点が良いですね。そして、亡くなってしまった命、現在ある命、これから生まれてくる命、それぞれを感じさせて「生と死」は普遍的なものだよねと考えさせてくれます。あと誇大なBGMがなく、ひたすらに生活音を引き立たせていて、それがめちゃくちゃ心地良くて、ほんとに静かだけど力強い映画になっています。昨年の私的ベスト作品『燃ゆる女の肖像』に似ているなと思ったり。劇中に出てくるモロッコのパンがめちゃくちゃ美味そう!食べたい!

アナザーラウンド

俺たちのマッツ・ミケルセン(私しか言ってない)が今回もゲキシブで最高でした。ストーリーはというとミドルエイジクライシスに悩む中年の高校教師たちが血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなって人生が楽しくなるという論文を見つけて、実際にやってみるというあらすじ。このあらすじ読んだら大体予想つくように結局飲み過ぎて適度な量を超えて酔い潰れるお約束のような展開になるんだけど、まあそこで終わらないというかアルコールでどうのこうのが主題ではないというのがこの映画の良いところ。主題/テーマとなっているのは「人生とは何か」であって、そこに対してのアプローチとして用いているのが劇中にちょこちょこ引用されるデンマーク人で実存主義の祖と呼ばれるセーレン・キルケゴールの哲学。彼の「不安」とか「絶望」の概念を散りばめたというか、それらをベースにこの物語を作ったのだろうなっていうのが奥深い。あと気になった点は北欧インテリアいいなあ、こういう光の照らし方オシャレだなあとか、何よりもデンマーク人のアルコール耐性どうなってんだよって部分ですかね。ちなみにキルケゴールの代表作『死にいたる病』は読んでみると「絶望絶望絶望アンド絶望!」しか言ってないくらい絶望って言葉が書いてあります。哲学って難しい!!

ラストナイト・イン・ソーホー

1960年代のロンドンに憧れるコーンウォールという田舎育ちの「見えちゃう」女の子がファッションデザイナーを目指してロンドンの大学に入学するも、住み始めた部屋で「見えちゃって」狂い始めるサイコスリラーアンドホラーアンドサスペンス。まあどのジャンルに分類するかは観た人次第なとこがあります。テーマ的には「昔は良かった」的な綺麗な言説の裏には忘れられたその「良い」のために搾取された犠牲者たちがいるぞっていうとこですかね。ストーリー的にも面白く練られていて最後まで目が離せないです。私的にはロンドンに滞在していたこともあって、懐かしい場所がたくさん出てきてまた住みたいなと思ったり、マンチェスター出身の登場人物のアクセントがめっちゃ北部訛りぃぃと思ったり、南ロンドン出身の人が如何に南ロンドンが危ないかを示唆していたりする部分などに沢山頷きながら見てました。ちなみにソーホーエリアは飯の不味さに世界的定評のあるイギリスで、数少ない安定して美味しい飯が食べれるエリアです、値段はバカ高いけど。あと関連だと『イギリス1960年代 -ビートルズからサッチャーへ-』という本があるのでそれ読んでみるとこの映画の解像度が更に上がるとオススメです。


まとめ

これらの作品以外にも多くの作品を映画館で見れました。作品名だけあげるとするならアカデミー賞『ノマドランド』はもちろん、ボスニア紛争での虐殺を描いた『アイダよ、どこへ』なども印象に残った作品でした。日本語と英語以外の言語の映画を見ることにハマってしまった感ありますね(なのに東京国際映画祭には行きそびれました)。そして何よりずっと楽しみに待っていた『007 No time to die』は見事に期待を裏切ってくれました!ダニエルクレイグ版の最後がこれかよって感じで文句ありありで、それだけで10万字は書けそうですが、やめときます。あと先述の某映画ログアプリでは採点もつけれるのですが、それを通してM1グランプリの審査員の大変さを感じることができますし、私の採点傾向は富澤審査員の採点と似た傾向だなと思います。来年も年明けからマッツ・俺たちの・何でもできるぜ・ミケルセン主演の映画があるらしいので楽しみです。ということでサンキュー今年の映画たち!!

あ、10月にNo time to die観てるので10月はありました!!!記憶から消してただけです!!


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