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登る煙に願いを込めて。

 昨日の夜に地元のテレビを観ていたらどんど焼きのニュースをやっていた。
 
 私の地元では本来は一月十四日に行うが最近はその付近の土日になることが多い。

 どんど焼きは正月飾りや書初めを燃やして歳神様が空に帰っていくのを見送り無病息災や五穀豊穣を祈願する行事である。

 小学生の頃は書初めをどんど焼き会場にもっていって燃やしていた。

 字の上達という願いを込めて炊き上げていたが肝心の私の腕前はちっとも上がらなかったのは信心が足りなかったのかもしれない。

 正月飾りは竹の油を含んだ門松や藁で編んだしめ縄や木製の破魔矢などを燃やすので大変勢いよく燃えたものである。

 真冬の冷やっとした空気の中で燃え盛るどんど焼きの炎はとても暖かく冷えた指先を温めるのにちょうどよかった。

 炎が落ち着くまでの間のお楽しみは保護者の方が用意してくれた甘酒。

 酒かすから作ったものだと思うがほんのりとアルコールを感じることが出来て頬がピンク色に染まったものだ。

 そうやってしばらく待って火が消えたら大人たちが燃えた跡から焼け残ったお飾りのミカンを取り出してくれた。

 これを食べると一年中風邪をひかないという事で大人気だった。

 焼けたミカンはほのかに温かく齧ると果汁がプシュッと吹き出てそれがまた熱くてびっくりする。

 少し焦げ臭いのがまた特別感があって何ともありがたいものを頂いている気持ちになったものだ。

 これを食べたからもう今年は風邪をひかないぜ~と言ってジャンバーを脱いでお腹を丸出しにしてはしゃいでいるお調子乗りの子もいた。

 ここまでが子どもの時間だった。

 後片付けは火を扱っていることもあって大人の出番だった。

 大人になってから何度か地区のどんど焼きの手伝いに出たことがあるが片付けが済んだ後は当然酒盛りになった。

 どんど焼きという行事をしながら親睦を深める飲み会はやはり楽しかった。
 
 私は地域の古老の話を聞くのが大好きなので興味深い昔の出来事などを耳に出来る貴重な機会だったのでとても有意義だった。

 どんど焼きにはそんな楽しい思い出がたくさん詰まっている。

 何よりドンドコ燃える炎を見るとテンションが上がる。

 ようし、今年もやるぞぅと気合の入るイベントだった。

 そんな事を思いながら昨日の晩御飯の話を少しだけ。

 昨日は妻がお泊りでお出かけだったので久しぶりにひとりご飯。

 妻を新幹線の駅まで送り届けて帰り道に買い物。

 帰宅してとりあえず湯船に普段よりたっぷりお湯を張って入浴。
 
 ザッパーと豪快に溢れるお湯を見てゾクゾクと背徳感に包まれる。

 かなり長湯をしてから晩御飯の支度。

 昨日のメインはシンプルにお肉。

 それもステーキ用のサーロイン300グラム!

 おかずはタコのお刺身が安かったのでそれを二人前。

 これでいいかなと思ったが私は副菜の鬼なのでもう一品。

 副菜はオニオンスライス半熟卵のせ。

 おかずの用意はものの五分で出来た。

 メインのステーキはお肉を常温に戻してスジ切りをする。

 両面に軽く塩コショウをしておく。

 フライパンに牛脂を乗せて火を点ける。
 
 よく溶けて煙が上がるくらいまで加熱したらお肉を乗せる。

 ジュバーッと香ばしい音と匂いが台所に広がる。

 片面を一分焼いたらひっくり返す。
 
 そうしたら赤ワインを振りかけてフランベ。
 
 炎が盛大にボゥと燃え上がる。

 すぐにフタをして弱火でじっくり焼く。

 完全に火が通る前に取り出してアルミホイルに包んでお肉を休ませる。

 その間にソースづくり。

 お肉を焼いたフライパンに醤油、赤ワイン、ワサビを入れて煮詰める。

 お肉がしっとりしたらお皿に盛ってソースをかけて出来上がり。

 よーし、こんなものでしょうと思いつつ居間にご飯を運ぶ。

 いただきますをして一人で乾杯。

 昨日のお酒は赤ワインでスタート。

 グラスにトットクトットクと注いでキュイッ。

 ううん、安物だけど渋みがほどほどでなかなかイケルとコンビニワインを褒める。

 ではまずはオニオンスライスから。

 卵を崩してマヨネーズをかけて食べる。
 
 玉ねぎはしっかり水に晒したので辛みはない。

 マヨネーズと卵の組み合わせがちょっとタルタルソースみたいで結構いける。

 ショリショリと食べながらワインをクッ。
 
 うん、合う合う。

 お刺身はどうだろう。
 
 パクリ、キュビッ…う~んこれはいまいちかも。

 まあ保留にしておいてメインのステーキを。

 ナイフでキコキコ切ってアムリ。

 うんさすがちょっといいお肉、脂がのっていて美味しいと素直な感想が漏れる。

 もちろん赤ワインとの相性はばっちりである。

 うんうん、これだよこれと妻の居ぬ間に贅沢気分を味わう。

 ワインはほどなく空になったので日本酒にチェンジ。

 普段だったら妻の視線を気にしてこそこそと一合つけるのだが、誰もいないことをいいことに二合つける。

 そして豪快にキュビッと煽る。

 くはぁぁぁぁぁ、たまらんと悦に入りながらグビグビ。

 そのお酒が呼び水になってもう一合…いやいやもう少しと夜が更けていったのであった。

 ハッと気が付くとアラームが鳴って目が覚めた。

 ずいぶんしばらくぶりに寝落ちしてしまった。

 カラッカラに乾いた喉をひりつかせながら水道水をがぶ飲みした。

 もちろん頭はガンガンと割れるようにいたいし胃の辺りがとってもどんよりしていた。

 ああ、愚かな二日酔い…と思いつつ再び眠りに落ちたのであった。

 羽目を外し過ぎるといけないという典型的な見本がここにいますよー。

 今日はお迎えに行かなければならないのでお酒はNG。

 昨夜の出来事はマボロシとして処理してしまおう、うん。

 
 

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