なんてすばらしい世界
ここ五年くらいだろうか、様々な文学賞やエッセイコンテストに応募を始めたのは。
それまでは漠然と毎日を過ごして四十代を迎えて、特に目標もなく淡々とした日々を過ごしていた。
ああ何だか毎日が同じことの繰り返しで楽しくはないなと感じていた。
そんな時にふと、そうだ何か文章を書いてみるかと思いついた。
実は学生時代は小説家志望であり、とにかく文章を書くことでご飯が食べられたら最高だなと思っていた。
書店で公募雑誌を購入して大学の図書館で原稿を書いてはありとあらゆる文学コンテストに手当たり次第応募していた。
その頃はあまり友人もおらず、決して充実した学生生活ではなく人生経験もろくになかった。
あったのは薄っぺらいプライドと根拠のない自信だけだった。
これはと思ったものに手当たり次第原稿を書いて送っていたが一度たりともいい結果が出る事はなかった。
大学を卒業してからもしばらくは自分はこんなもんじゃないという諦めの悪さを発揮してコツコツと応募を続けていた。
しかしそのうちに何の手ごたえもないのと仕事に日々を忙殺されるようになってきたのでいつの間にか文章を書くことはほとんどなくなった。
それから二十年近い年月が流れた。
生活に追われてこのままでいいのかなと思っていた頃に知り合いからネット上にエッセイを書くサイトがあるという話を聞いた。
エッセイ…もう長い間自分の中にくすぶっていた文章を書く事への興味の炎がチラッと点くのが分かった。
早速検索して一番最初に出てきたサイトを覗いてみた。
投稿者の皆さんが自分の言いたい事や日々の出来事を瑞々しく綴っておりすぐにその世界に引き込まれた。
その日の夜には早速ちょうど患って地獄の苦しみを味わっていた痛風の話を500文字くらいの短いエッセイにして投稿してみた。
すると翌日には読まれた方からの反応があり、それがまたとてつもなく嬉しくて体に電流が走った。
それ以来夢中になって毎日エッセイを書き続けた。
同時にコンテストに原稿を応募する活動も再開させた。
そうなると毎日何かしら書いているわけでぼんやりと過ごしている時は確実に減った。
コツコツとエッセイを書きながらコンテストにも応募していると大変ありがたい事にポツリポツリと小さな賞を頂く機会にも恵まれた。
結果がついてくると俄然やる気も盛り上がってくる。
三年くらいはそんな充実した時間が過ぎていった。
それがある日突然ホームグラウンドにしていたエッセイのサイトが閉鎖されることになった。
まさに青天の霹靂で正直もう書くことを止めてしまおうかと思ったこともある。
そのサイトで知り合った方々ともコメントのやり取りで仲良くさせていただいていたのでその関係が終わるのもとても辛かった。
しかし私の中にこのまま試合終了でいいのかという思いがまだ残っていた。
完全に納得するまで書いて書いて書きまくってやろうと気持ちを切り替えるのに時間はかからなかった。
そこで次に私が選んだ場所がここnoteだった。
実はお試しで以前から何度か投稿をしていたのだが、勝手が違って戸惑う事も多く、読んでくれる人もほとんどいなかった。
せっかく文章を書いたら読んでもらいたいというのは人情だと思う。
なので自分の中で毎日更新をしてみようと決めた。
そうそう大きなイベントが起きるはずもなくふと目にした小さな出来事を拾うアンテナを常に張り巡らせている。
そうすることによって日々の生活に程よい緊張感が生まれ、あっこれは今日書こうと思う出来事に遭遇する確率が格段に上がった。
まあ大抵は日記のような他愛もない話ばかりであるが、個性を出すというか書きたい事として前日の晩ご飯の話をするようにしている。
文字数は大体二千字前後で前半がその日の話題、後半がご飯の事の二部構成である。
そのスタイルが自分の中で定着してもう一年以上になる。
そんなマンネリな私の拙いエッセイを読んでくださる方がいるのは大変嬉しいしとてもありがたい。
ここで新たに知り合ってお友達になってくださった方も大勢いるので現実世界とは違うまた別の世界での大切な方々である。
大学時代ひたすら孤独に誰も読んでくれない小説を原稿用紙に叩きつけるように書いていた迸る情熱はどうやらまだ残っている。
これからもnoteの世界の片隅でごくごく日常の四畳半エッセイをコツコツと書いていきたいと思う。
四十代に入って見つけた新しい自分の世界。
よそ行きではなく普段着の飾らない自分でいたいものだとつねづね思っている。
そんな事を考えながらカタカタとキーボードを叩く日々。
おっかなびっくり飛び込んできた私を暖かく迎え入れてくれたnoteの世界はとても大切な居場所である。
どうか端っこの方でいいのでここにいさせてください。
結局何が言いたいかというと文章を書くのは楽しいという事だ。
なぁんだ昔から変わっていないじゃん。
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