お前は自慢の息子じゃけぇ
明日は父の日、母の日の陰に隠れてどうしても印象の薄い一日だが私は必ず祝う事にしている。
父は芋焼酎が好きなので一升瓶を贈っていたが最近は酒量が落ちたのでその分お値段がちょっといい四合瓶に切り替えた。
毎年父の日は義父のお墓参りに行くのだが明日は叔父の法事なので今日行ってきた。
山奥の墓地でとても静かな所である。
もちろん妻と一緒に行ったのだが道中でお義父さんが好きだった銘柄のビールとお花を買った。
お墓参りは少し前に行ったばかりだったが訪ねて来る人がいないのか雑草が生えておりお供えの花も枯れていた。
なので草抜きを丹念にしてお花を活け替えた。
それから線香をあげてしばしの語らい。
義父との思い出と言えば一緒にお酒を飲んでへべれけになった記憶が一番多い。
かなりの酒豪で日本酒だったら一升を軽々と飲んでいた。
晩年は四リットル入りのお徳用ウイスキーを四日で飲み干すというハイペースで会う時はいつも酔っぱらっていた。
義父はお酒の飲み過ぎで肝硬変を起こしそれが原因で亡くなったのだがどう考えても飲みすぎだったと思う。
ウイスキーのストレートを喉の奥に放り込むようにカッと飲む姿が今も忘れられない。
享年59歳、あまりに早すぎる死に妻が受けたショックは計り知れず立ち直るまでに何年もかかった。
そんな義父だったが娘を溺愛しておりいつも私に内緒でお小遣いを渡していたそうである。
景気のいい時は一万円、そうでもない時は五千円とその時のお財布事情があったにせよとっくに成人した娘にこっそりお小遣いをあげるというのが微笑ましい。
義父と飲む時は大抵はさし飲みでいつも自分の仕事がいかに大変で世の中の役に立っているのかという事を熱弁していた。
私ははぁ、それはそれは。
へぇ、そんなすごい事をしているんですかと丁寧な相槌を打つのを忘れなかった。
多分仕事上の守秘義務とかがあったとは思うが何せベロンベロンの酔っぱらいである、倫理観も職業意識もなく何より義理の息子に自分の自慢が出来るのが嬉しくてたまらないようだった。
そんな義父だが時おりシラフに戻ったかのように真面目におい、娘は幸せにしているか?と真顔で聞いてこられることがあった。
私はそんな時には往年の釣り漫画の名ゼリフの彼女を幸せに出来ているかは自信がないですが俺は世界中で一番幸せですと答えていた。
それを聞くと義父はニコーッと笑ってまあそういうことを言えるという事はお前たちは上手くやっているんだろうと納得してウイスキーをカパッと飲み干して、ほらお前もやれとグラスになみなみとお酒を注がれるのであった。
義父との思い出にはいつもお酒がついて回る。
豪快でたくましい男を演じていたが実際にはお酒が抜けていると気が小さくてどこか所在なさげな人だった。
立派なアル中だったが、義父のお葬式に妻からお願いだからお酒の飲み過ぎは絶対にやめてね泣きながら言われた。
それまでは毎日浴びるほど飲んでいたお酒だったが、酒量をガクンと減らした。
さすがに父に続いて旦那までお酒で亡くしたら妻も立ち直れないと思ったのがまず一番大きな理由である。
それ以来健康診断で肝臓の数値が危険水域になったことはない。
お酒は大好きなので止める事は難しいと思うが量は調節できる意志の強さは最低限持ち合わせている。
なのでこれからもお酒とは上手に付き合いながら妻より一日でもいいから長生きをしなければならない。
それがお義父さんと心でかわした約束だと思うから。
そんな事を思いながら昨日の晩御飯の話を少しだけ。
昨日のメインはポークステーキ。
筋切りをして叩いて伸ばして薄くする。
塩コショウとニンニクを刷り込んでしばし休ませる。
その間に副菜づくり。
白菜をざく切りにしてベーコンと炒める。
味付けは鶏がらスープの素とアジシオ。
もう一品は冷ややっこ。
薬味はシンプルに大葉とネギ。
メインの豚肉を焦がさないように両面丁寧に焼いたら晩御飯の出来上がり。
妻を呼んでいただきます。
昨日は休肝日。
まずは冷ややっこから。
試しに普段買う豆腐よりも数十円安いものを試してみたのだが水っぽくて大豆の香りも全くせずに全然美味しくなかった。
妻もすぐに気が付いたようでこの豆腐はちょっとねぇ…と箸が伸びない様子だった。
気を取り直して白菜とベーコンの炒め物を食べる。
これは思った通りの味できちんと思った所に着地していた。
アジシオを久しぶりに使ったが少量で味が決まるので便利だなと思った。
ではメインのポークステーキをいただく。
ナイフで切り分けて口に運ぶと豚肉の旨味が口の中に溢れる。
脂っ気はあまりないがその分食べやすかった。
何よりお肉をナイフとフォークで食べるのはご馳走感があっていい。
パクリパクとゆっくり食べて完食。
昨日も満腹までは食べなかった。
これで一グラムでも体重が減ればいいなとちょっと思った。
明日は朝からお出かけ。
空模様が気になる所。
ここのところ梅雨前なのに暑すぎるので少しは気温が下がった方がいいのか。
四季のある日本はどこにいったのでしょうね。
お義父さん一日早い父の日おめでとうございます。
いつも見守ってくれていてありがとうです。