
大空に泳げみんなの鯉のぼり。
早いもので今日から五月、この時期になると家の近所の川に鯉のぼりが
泳ぐ景色が見られる。
数はそれほど多くは無いが風が吹くと気持ちよさそうになびいている姿を見ると胸がすく思いがする。
私が子どもの頃は男の子のいる家庭は子どもの日前後には大きな鯉のぼりを泳がせたものである。
今では鯉のぼりの土台を設置する庭を持っている家庭が少なくなり盛大に祝っていると近隣の住民から苦情が来るという時代になったらしい。
何とも世知辛いなと思う。
私が子どもの頃には男ばかりの三人兄弟だったので祖父が張り切って鯉のぼりを建ててくれた。
まず、畑の空いている所にひたすら穴を掘る。
深さにして一メートル半以上はあったと思う、子どもが落ちたら大けがをするから決して近づかないようにと言われていた。
そこに大人の頭くらいの大きな石をゴロゴロと敷き詰める。
それが終わったら穴に土台を組んで竿を差して土を埋めていく。
十メートル以上ある竿を立てるのは大仕事で近所に住んでいた叔父や親戚の力自慢が集まったものである。
ヨッセヨッセと声をかけながら竿が経つと後は滑車で鯉のぼりを揚げていく。
何分幼いころの記憶なので間違っている所もあるかもしれないがこれで鯉のぼり建ての大仕事は終了である。
その日の晩御飯はお礼の宴会になったのを覚えている。
悠然と空を泳ぐ鯉のぼりを見ていると何とも誇らしい気持ちになったものだ。
近所では我が家のものが一番立派だったので見物に来る人がいた。
その度に祖父が家から出てきて鯉のぼり自慢をしていた姿を懐かしく思い出す。
鯉のぼりは五月の連休が終わる頃に仕舞われるのが常でこれがまた大仕事だった。
何せ長い竿を下ろさなくてはならないので人手が必要だった。
その時もまた親戚が集まって慎重にゆっくりゆっくり竿を下ろしていった。
無事に終わったら皆汗だくだった。
そしてまたお疲れ様の宴会が開かれるのであった。
昔は大人が集まると大抵宴会がセットになっていた。
私もその日ばかりは普段禁止されている瓶のオレンジジュースが支給されるのと愛嬌よく酔っ払いの相手をしているとお小遣いがもらえたりしたので決して宴会は嫌いではなかった。
鯉のぼりを揚げていたは私が小学生まででそれ以降は納屋に仕舞いっぱなしになった。
最後に見かけたのは納屋を解体して離れを建てる時でネズミに喰われてボロボロになっていた。
それをみてああ…と少し切なかった。
とはいえ子どもの頃に鯉のぼりの醍醐味を存分に味わったので幸せだったと思う。
そんな事を考えながら昨日の晩御飯を振り返ってみる。
昨日は日曜日だったので買い物には行かなかった。
野菜室を見るとセリがあったのでこれを使おうと思った。
まずはお米を二合炊いて、浸水させてから酒と塩を振って炊飯する。
炊けるまでの間にセリを熱湯でサッと湯がいて冷水にとってよく冷ましてから五ミリ幅にザクザク切っておく。
次はおかずを作る。
合い挽き肉を白っぽくなるまで良く捏ねる。
そこに新玉ねぎのみじん切り、牛乳、食パン、卵、塩コショウ、ナツメグを加えてさらに捏ねる。
全体が馴染んだら肉が落ち着くまで少し放置。
その間に副菜を簡単に。
新玉ねぎをスライスする、そこに油を捨てたツナ缶を合わせる。
味付けは塩コショウとレモン果汁と隠し味に醤油。
さっくりと混ぜたらお皿に盛って卵黄をポトリと落とせばツナオニオンサラダの完成。
次はハンバーグを仕上げていく。
フライパンに油を敷いて火を点けたらそこにパンパンと空気を抜いた肉だねを並べていく。
最初の火加減は中火、焦げやすいので注意しながら焼く。
三分くらいしたら焼き加減を見てよさそうだったらひっくり返す。
そこに水をハンバーグの底が浸るくらい入れて火加減を弱火にする。
後はフタをして十分ほど放置。
汁物はセリのかき玉汁をササッと作る。
フライパンがチリチリ言い出したら焼き具合を確認する。
箸を刺してみて透明な肉汁が出てきたら完成。
ソースはフライパンをサッと拭いてそこにケチャップとソース、赤ワインを投入して軽く加熱して煮詰めたら出来上がり。
その頃にはご飯が炊けるのでアツアツのうちにセリと合わせる。
これでセリご飯の一丁上がり。
ようし出来たよーと妻を呼ぶ。
料理を見た瞬間、わーいハンバーグだぁと大喜びしているので可愛いなぁと思ってしまう。
さぁさいただきましょうと言ってまずは乾杯。
昨日のお酒はレモンサワー。
氷をグラスにギッチリ詰めてレモンサワーの素を入れて炭酸をショワーと注ぐ。
では乾杯とグラスを合わせる。
キューッと飲むと酸味が心地いい。
くひーっ爽やかーっ!と声が出る。
ではおかずを食べていく。
まずは玉ねぎサラダから、卵黄を崩して食べるとツナと玉ねぎのコンビがいい仕事をしている。
そこに卵黄のコクが加わるのでボリュームもあってなかなかいい。
これはあっさりしていいなとショリショリと食べる。
次はハンバーグを食べる。
お手軽ソースによくつけてモグリと口に含むと肉汁がジュワァとほとばしる。
ソースも良いお味でこれは文句なしに飯のおかずだなぁと思った。
妻はかなり気に入ったみたいであっという間に二個目に取り掛かっていた。
私も負けじと食べる。
合い間にセリご飯を食べたがセリのキシキシした歯ごたえとちょっと青臭い癖のある味がいい塩梅でご飯に馴染んでいて大人の味だった。
妻はあまりお気に召さなかったみたいで箸が進んでいなかった。
なので冷凍ご飯をチンする?と聞いたら目を輝かせて是非と言ってきた。
私はセリご飯が気に入ったので二膳食べた。
ハンバーグでお腹いっぱいになったのでご馳走様。
昨日のお酒はレモンサワー三杯とまあまあ程よい感じ。
片づけをしながら明日何を食べようかなと早くも考えるのであった。
いやはや気候がいいと腹が減るなぁ。
グゥ。