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卵かけご飯は冬の朝が似合う。
ハァっ、吐く息の白い朝。
眠い目をこすり居間に行くと朝ごはんの支度がしてある。
炊き立ての白ご飯、玉ねぎと油揚げのお味噌汁、めざしが三匹、後は沢庵と白菜の漬物。
ほら、ちゃっちゃと食べちゃいなさいと母が言う。
半分寝ぼけながらいただきますをして箸を取る。
父は新聞を読みながら朝のニュースも熱心に観ている。
ほら、お父さんご飯食べてと母が少し甲高い声で呼びかける。
そうこうするうちに祖父と祖母も食卓に座っている。
兄弟たちも隣で忙しそうにご飯を掻き込んでいる。
私も負けじとお味噌汁を啜ってめざしを齧る。
しょっぱい味の連続でご飯が進む。
育ち盛りの小学生は朝から食欲旺盛である。
あっという間に一膳食べ終えてお代わり!と元気な声で母に催促する。
はいはい、と言いながら二杯目もてんこ盛りによそってくれる。
炊き立てのご飯は甘くて思い切り息を吸い込むとむせそうになる位いい香りがする。
三分の一くらい食べたらおかずがあらかたなくなる。
そんな時には卵の出番だ。
ちゃぶ台の角にコツコツと当ててそれから小鉢にカショッと割る。
大抵小さな殻が入ってしまうので黄身を崩さないように慎重に取り除く。
カッカッとかき混ぜてそこに醤油をターッと一回し。
それをまだ温かいご飯にかけまわす。
全体をさっくりかき混ぜたらまずは一口パクリ。
少し醤油が濃いくらいが私の好み。
白菜の漬物で卵かけご飯をくるんで食べるとショリショリした白菜と卵のコクのある味が合わさって何とも言えず癖になる。
次は海苔の佃煮を冷蔵庫から引っ張り出してきてそれを卵かけご飯に乗せて口に運ぶ。
甘じょっぱい佃煮の味がこれまたよく合う。
たまに頂き物の明太子があれば大喜びであった。
魚卵と鶏卵の卵の二重奏の豪華さにイケないことをしているようで頭がクラクラしたものである。
とはいえ最後はシンプルに卵かけご飯だけを一気に掻き込むのは変わらなかった。
朝からご飯を二膳食べさせる力が生卵にはあった。
お腹いっぱいで横になりたい気分になったがすぐに友達が迎えに来るのでランドセルを背負っていってきまーすと家を飛び出るのであった。
なんてことはない朝の風景には卵がいつもいた。
あれが私のシアワセ原体験。