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分かり合えないこともある
高校時代のアルバイトからはじまり、就職や転職をしながらもなんやかんやで15年以上接客の仕事を続けている。
15年続けていても全然得意になった気がしないどころか、未だに接客が向いていないと思う時もある。
ただ接客という仕事を離れてしまった場合、本当に人と話さなくなる自分が容易に想像できるし、そうなった自分が今後も社会に溶け込んでいく自信がない。
私にとって接客の仕事はそれなりに社会で生きていくための訓練なのである。
しかし接客という仕事を続けていると、結構な確率で「変な人」に遭遇する。
「変な人」というのは私が今までの人生で常識として培ってきたものが一切通用しない人のことであり、出会うと非常に困惑する。
「自分がされて嫌なことを他の人にするな」という親の教育からはじまり、常識の感覚が同じような友人と過ごしていた私は社会に出るまではかなりの温室育ちだったのだと思う。
「所詮は人と人、誰でも話せばきっと分かり合える!」と本気で思っていたので、20代の前半あたりまでは分かり合えない人に遭遇する度に心を痛めたり、うまく伝えられない自分を責めたりしていた。
そういう経験を積み重ねるうちに残念だが「変な人」とはどうしたって分かり合えないし、その人にとっては私が「変な人」なんだろうな、ということがわかってきた。
「お客様は神様だ」と信じている人がいるし「ゴネたらなんでも許してくれる」と考えている人もいる。
個人的にはお客様が神様かどうかを決めるのは店員側だと思うし、ゴネたら許してもらえるのは自分の気持ちをうまく伝えられない幼少期までではないのかと思うのだが、まあいろんな考え方があるので仕方がない。
…仕方がないので「変な人」に遭遇したときに自分の心を守るライフハックを思いついた。
脳内にジョイマンを登場させるのである。
「なんだコイツ〜〜〜!?!?!?」
とにかく脳内で池谷さんに思いっきり叫んでもらう。
「ナナナナー ナナナナー なななななんこつー」
高木さんには軽やかなステップを踏みながら登場してもらう。
また、口では「大変申し訳ございません。」などと言いつつも脳内では「まことにすいまめーん!」ぐらいに変換させればだいぶ心も軽い。
…たぶん接客の仕事は大真面目にやるよりもこれぐらい割り切ってやっていた方が楽しく続けられる。
ここまで書いていて改めて思うのだがきっと、というか絶対、私も誰かにとっての「変な人」である。
それでもこんな自分を受け入れてくれる人を大切にしながら生きていければそれでいいんだろうな、と思う。