日本の年収400万未満の人は半数以上
1. 日本の平均年収とその実態
2023年の日本の平均年収は414万円で、中央値は360万円です。この差が示しているのは、平均年収を引き上げている一部の高所得者の存在です。例えば、全体の年収分布では、年収400万円未満の人が54%と半数以上を占めており、年収700万円以上の人はわずか7.4%しかいません。これにより、一般の日本人の実際の収入水準は、思っているよりもかなり低いのが現実です。
さらに、年収1000万円以上になると1.99%しかおらず、これはほぼ2%に過ぎません。このため、年収700万円以上や1000万円以上を求める結婚条件や就職条件がいかに難しいかが浮き彫りになっています。多くの人がこれを理想とする一方、実際にその収入を得ている人は非常に少数であり、こうした収入を得るための競争が激しいことがわかります。
また、障害賃金(生涯の稼ぎ)が約2億2000万円と言われていますが、これはあくまで税引前の数字であり、国民負担率(税金や社会保険料)を差し引いた後の手取りは大幅に減ります。国民負担率は過去のデータによれば45%を超えており、年収の約半分が税金や社会保険料として差し引かれます。加えて、消費税や固定資産税などの間接税も考慮すると、実際に使えるお金はさらに少なくなります。こうした現実が、日本の中間層の生活の厳しさを示しています。
2. 日本の実質賃金の推移と問題点
日本の賃金は、1989年のバブル崩壊を境に下降線をたどっており、現在までに大幅に減少しています。2023年の実質賃金は433万円で、1989年のバブル期の452万円から比べても下がっています。これは、単に給与額が下がっただけでなく、物価の上昇に対して賃金が追いついていないという深刻な問題を意味します。
特に物価を考慮した「実質賃金」が下がっているのは、日本が「慢性的なデフレ」に陥っているためです。デフレとは、物価が下がり続ける現象ですが、日本の場合、物価が下がると同時に賃金も下がり、消費が冷え込むという悪循環に陥っています。このため、生活の質が低下し、経済全体が停滞しています。
さらに、コロナ禍、消費税増税、ロシアのウクライナ侵攻などの外的要因も加わり、日本はここ数年、コストプッシュ型のインフレを経験しています。これは、エネルギー価格や輸入物価の上昇が引き金となり、企業の生産コストが上がり、結果的に物価が上昇する現象です。しかし、このインフレは、賃金の上昇を伴っていないため、生活がさらに厳しくなっています。人々は、物価の上昇に対処するための収入増加が得られないまま、日々の生活費の負担が重くなっているのです。
3. 世界と比較した日本の低成長
G7の主要先進国と比較しても、日本の賃金の成長は異常に低いことがわかります。アメリカやイギリス、ドイツ、フランスなどでは名目賃金が大幅に上昇している一方で、日本はほとんど増えていません。1991年のバブル崩壊から現在に至るまで、日本の名目賃金はわずか約11%しか増加しておらず、実質賃金もわずか3%の増加に留まっています。これは、他の先進国と比べて日本が経済的に停滞している証拠です。
名目賃金の上昇が少ないということは、基本的な給与があまり増えていないことを意味します。一方で、実質賃金がほとんど変わっていないことは、物価もほとんど上がっていないか、もしくは賃金と物価がバランスを取れていないことを示しています。日本は長期にわたるデフレの影響で物価が上がらず、その結果、賃金も停滞しているのです。
他国では、生産性の向上や経済成長によって賃金が上昇し、人々の生活が豊かになっています。例えば、アメリカではイノベーションや技術の発展により、企業の生産性が大幅に向上し、その結果、名目賃金と実質賃金が共に大きく伸びています。しかし、日本では技術革新や生産性の向上が遅れており、企業が賃金を増やす余地がほとんどありません。また、政府の経済政策も、積極的に経済成長を促すようなインフラ投資や消費刺激策が不足しているため、賃金の停滞が続いているのです。
さらに、日本の企業は将来のリスクを避けるために、設備投資や人材投資を控えていることが多いです。例えば、新しい工場を建設したり、新技術を導入することによって生産性を向上させる代わりに、現状維持を優先している企業が多く、これが経済全体の成長を阻んでいます。このように、日本の経済成長は停滞しており、賃金が上がらないまま物価だけが上がっている状況が、国民の生活をさらに苦しくしています。
日本の賃金停滞の背景には、経済全体の低成長や企業の生産性向上への消極性、そして政府の政策の遅れが関わっています。この問題を解決するためには、経済全体の成長を促すための政策転換や、企業の積極的な投資が不可欠です。
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