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声オタ目線語る傑作「がんばっていきまっしょい」

10月25日に映画「がんばっていきまっしょい」が公開されてから1週間が経過しました。
完成披露上映会で見てからこの作品に感銘を受け、リアルタイムで松山に訪問したり、メディア展開を追ったりと、満ち足りた期間を過ごすことができました。

作品のファンとしてできること。それは、この作品が風化せず人々の記憶に残り続けるよう、より多くに人が作品の魅力を発信し伝播させていくことだと思います。

作品を見ていない人はこれをきっかけに劇場に足を運んでほしいし、見に行った人は私と同じようにそれぞれの想いを発信してほしい。そう切に願います。

複雑な“人の気持ち”に向き合い続ける作品

公開時の新宿ピカデリーに設置されたパネル


さて本題です。
「がんばっていきまっしょい」は1996年に生まれた青春小説。“スポ根もの”ではない“日常部活もの”の先駆けとして数度の実写化と共に愛せれてきた作品ですが、今回のアニメ化もその本質的な色彩は変わりません。
そして、この作品の最も魅力的に感じた点はどこか。私は“人間の感情描写”と思います。

アニメに問わず、キャラクターの心情をわかりやすくデフォルメ化された作品を多く見てきました。例えば、このキャラはイケメンキャラだからこういった行動をとる…とか、この見た目の悪党はこういう考えをする…とか。

しかし実際は人の心ってものはもっと複雑。悪人といわれる人が多額の寄付をしたり、善人と呼ばれる人が犯罪を犯したり。
そして辛い時、苦しい時。それでも諦めたくられない、前に進もうとする“矛盾”の姿。その複雑さに人間の美しさをがあると思うし、その美しさをデフォルメ化しない勇気とこだわりをもって描いたのがこの作品の最大の魅力と思います。

本作には、感情の説明描写が極めて少ないです。
悦ネエってどんなキャラ?ヒメはこの時なんでこんな行動をした?という疑問に説明はなく、彼女のこれまで示してきた人間性や行動で想像するしかない。
そこに答えはないし、見ている人のそれぞれの歩んできた人生や価値観によって解は変わってくるでしょう。(実際感想回したり感想ブログを読んでもそう思った。)
そんな“人を理解する”ためには、雑音の混じらない劇場での体験が必須です。

繊細でゆっくりと、でも確かに色を変えていく空を眺めるような、そんな体験ができますよ。

一切の妥協を感じない“作品への誠実さ”

作品に多く登場する松山市・三津の海岸


素人のタレントが吹き替えするアニメ、過剰なネガティブ描写を強調する作品…インパクトと売り上げのためだけにノイズをかけた作品に辟易することが多いですし、そんな映画に携わったひとりひとりへの誠意を感じず、到底認めることはできません。

そんな中、「がんばっていきまっしょい」は作品作りへの妥協を一切感じません。
CGだからことできる細部に行き渡った描写、何度も原作を彷彿とさせるリスペクト、テンポよく、だけどじっくりと心情描写を描くストーリー、一見知名度起用に見えるキャスティングに至るまで(後述します)。

クレジットをみた方はご存知かと思いますが、この作品はかなりの少数精鋭。
しかもトレンドとはかなり逸れているこの作品が全国規模で公開されているのは、製作陣の姿勢が伝わった結果なのではないでしょうか。

そしてやはり忘れられないのは、作品の舞台松山市へのリスペクト
監督の櫻木さん曰く、企画決定後に市から協力の話が来たとのこと。それも作品や舞台・原作への敬意が伝わっている証拠だと思います。
実際、映画で描かれる松山の景色は素晴らしい。そして実際の目で見た松山の景色は、その景色で心を動かされる主人公の心情に説得力を持たせてくれます。

この作品への真の理解には“松山への来訪”は必須といっても過言ではないと思います。それくらい素晴らしい体験ができました!

雨宮天さんのファンが見る本作の“熱さ”

雑誌やラジオ、テレビに至るまで多くのメディアに出演されていました。


主題です。私を雨宮さんのファンとして認識する人が多いと思います。
それなりに彼女を見てきた身として、この作品には非常に熱い想いを感じるのです。

まず当然「全国公開される映画のクレジットで一番上に名前がくる」という事実。
役者のファンとしてこれほど嬉しいことがありましょうか!
そして座長として、ラジオのパーソナリティ(作品に対する濃い話がたくさん聴ける本当に良い番組でした)を務め、多くのメディア出演、松山市役所訪問や副知事や原作者の敷島様との対面など、非常に立派な姿を見ることができました。

そして、それ以上に感慨深く思えたのは、この作品の性質を知ってからです。
「がんばっていきまっしょい」は余白が多く、繊細な心情描写を(雨宮さんの言葉を借りると)針に糸を通すように演じる技術が問われる作品です。
私の見る雨宮さんの持つ何よりの武器はまさにそういった性質の演技力だと思っていたし、それが正しく評価された結果なのではないか、と胸が熱くなります。

思えば、そんな繊細な演技は、謂わゆるアニメチックでインパクトのある演技に比べると日の目を浴びづらいものなのではないでしょうか。実際、今や確固たる地位を確立している雨宮さんにも出演本数が落ち着いていた時期もあります。
しかし、雨宮さんは己の持ち味を磨き続け、歌手としても「“声優”としてのアーティスト像」を10年かけ一から確立していきました。
そんな“役者としての矜持”を持ち続けた雨宮天さんが、映画「がんばっていきまっしょい」の本質と重なって見えるのです。

また、櫻木監督談では、今回のキャスティングは「生っぽい繊細な演技のできる技術力」はもちろん、キャラクターと人間性が近しい役者を選出しているのだそう。
事実、この作品のキャラクターと声優の親和性は非常に高く、初めて全員が揃って登壇した完全披露上映会では「大人になった登場人物はこんな感じなのかな」と無意識に思ってしまうような不思議な感覚に。
そういった目線でラジオやインタビューをみるとより深みが増してくる作品と感じます。


私が語れるのはこれくらいでしょうか。
とにかくどんな人にも見てほしいし、人生で雨宮さんとすれ違う(比喩だよ)機会があった人にはより見てほしい。

そしてこの素敵な作品がいつまでも風化せず、今なお愛されている原作小説や実写作品と同じく語り継がれていくことを切に願います。

佐伯姫…𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬______


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