【せ】 石刃・石刃技法
石刃・石刃技法 ≪せきじんぎほう≫
※ 写真上:岩井沢遺跡の石刃
「石刃」とは、剥片の一種で長さが幅の2倍以上である縦長剥片の一種であり(芹沢 1974 p.42、柳沢 1984 pp.7)、両側縁がほぼ平行する規格的な縦長剥片(石刃)を連続的に剝離する剥片剥離技術を「石刃技法」と定義する(旧石器文化談話会編 2021 p.121 「石刃技法」)。そして、「長手の剥片を剝取ろうという意図で連続的に割れた石片」を示す場合もある(山中 2006 pp.20)。
その他にも、広義な意味として「縦長剥片」・「石刃状剝片」と呼称される。「縦長剥片」は、両側縁がほぼ平行する石刃と異なり、「必ずしも両側縁が平行せず、打撃軸方向に長い剥片」をさす(旧石器文化談話会編 2021 p.143 「縦長剥片」)。
石刃の実験製作 (筆者、金彦中による)
作られた石刃はそのまま使用されることもあれば、多くの場合、石刃の縁辺や基部、先端に二次加工を施してナイフ形石器や搔器・削器。彫器として活用される。
日本列島おける石刃技法は後期旧石器時代前半前葉から確認されている。しかし、これを列島内で中期旧石器時代以降技術革新として作るようになったとみる(自生説)、近い韓半島やユーラシア大陸から到来したとみる(渡来説)などの主張がある。そのため、日本列島の石刃技法の起源については未だ定まっていない。一方、最近学術調査が行われた長野県香坂山遺跡(国武他 2021)で約36,000年前から大形石刃が製作されることが確認されている。
(東北大学大学院 金 彦中)
石刃の接合資料(筆者製作の実験資料)
参考・引用文献
旧石器文化談話会編 2021『旧石器考古学辞典』第四版 p.1∼341 学生社
国武貞克・須藤隆司・堤隆 2021 「日本列島最古の石刃石器群の構造とその起源」『旧石器研究』第17号 pp.125∼146 日本旧石器学会
芹沢長介編 1974『古代史発掘1 最古の狩人たち』 p.1∼164 講談社
柳沢和明 1984 「石刃技法の概念定義」『月刊考古学ジャーナル』No.229 pp.7∼10 ニュー・サイエンス社
山中一郎 2006 「石器技術学から見る「石刃」」『第20回東北日本の旧石器文化を語る会 東北日本の石刃石器群』 pp.13∼25 東北日本の旧石器文化を語る会
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