【れ】 礫群
礫群 【れきぐん】
※ 写真は静岡県広野北遺跡の礫群
焼け礫の集合で、5点以上、数百から数千点の大規模礫群もある。礫群構成礫の大きさは、おおむね拳大以下で1kg未満の重量である。また、完形礫よりも割れ礫(破損礫)が主体の場合が多い。
礫群構成礫の被熱痕跡として、赤化、黒色化(焚火の薪と接触してススが付着と推定される)がある。調理対象に由来すると考えられる黒色(タール状)付着物を持つ場合もある。
礫群構成礫の分布から3種が認識されている。礫相互が接して分布する密集型、集中部と周辺の分散部分をもつ集中型、集中部がなく分散分布を示す分散型である。密集型は、石器ブロックとは重ならない、完形礫が多いなどの特徴を持ち、使用礫のストック状態などと認識されることがある。
古くは、日本列島では38000年前頃のcal14C年代を出している熊本県石の本遺跡群の8区Ⅳb層や長野県貫の木遺跡のH4地区Ⅰ石器文化の礫群があげられる。鹿児島県種子島の横峯C遺跡、立切遺跡の礫群は、36000年前頃のcal14C年代と比較的古い。宮崎県後牟田遺跡、長野県石子原遺跡、竹佐仲原遺跡の礫群も古相の礫群として注目される。九州南部や武蔵野台地をはじめとする関東地域の旧石器時代遺跡の集中地域では、最古段階から礫群が出現している。武蔵野台地Ⅳ下・Ⅴ層段階相当や、砂川期相当の遺跡で最も多くの礫群が確認されている。最新段階では細石刃石器群にみられるが、鹿児島県に集中する傾向がある。
相模野台地の礫群 (神奈川県海老名市柏ヶ谷長ヲサ遺跡)
特に、九州中南部、東海東部、南関東および野尻湖遺跡群で膨大な数の礫群が確認されている。中国や四国西部でも比較的多い。一方で、九州北部、山陰、北陸、四国東部、近畿、東海西部、中部、東北、北海道の各地域では希少な存在である。また、沖縄では、確認されていない。特に、白滝黒曜石、東北頁岩、信州黒曜石、二上山サヌカイト、五色台サヌカイト、腰岳黒曜石などの主要石器石材原産地では、礫群の出土が希少である。なお、こうした地域の中でも、長崎県諫早から雲仙岳山麓にかけての地域、大阪府高槻市富田台地地域、北海道帯広市周辺に比較的多く、島根県原田遺跡、岩手県早坂平遺跡といった礫群集中遺跡もある。
調理施設と考えられているが、石蒸焼き、焼石グリル、ストーンボイリングといった民族例にみる焼石調理法の中で、特に石蒸焼き調理法を想定した研究が多い。
(保坂康夫)
参考文献
保坂康夫 2012 『日本旧石器時代の礫群をめぐる総合的研究』
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