信州鷹山 旧石器研究ワークショップ報告
明治大学黒耀石研究センターおよびパレオ・ラブ共催の「信州鷹山 旧石器研究ワークショップ」が、10月7日(土)・8日(日)・9日(祝)の3日間の日程を無事に終えた。
開催場所は、長野県小県郡長和町の明治大学黒耀石研究センターおよび同町長期滞在、長和町黒耀石体験ミュージアム、星くそ館、星ヶ台黒曜石原産地であった。
参加者は、大学院生6名・学部生10名、社会人5名、講師10名の計31名であった。参加大学は、北から、東北大・東北学院大・松本大・早稲田大・明治大・大正大・愛知学院大・南山大・奈良大となる。
ワークショップでは、以下のプログラムが実施された。
◆ 10月7日
7日の冒頭は、小野昭(元明治大学黒耀石研究センター長)さんから、どのような枠組みをもって旧石器時代を研究するかという「旧石器時代研究のフレームワーク」の講義から始まった。
小野さんは、自ら学部時代の卒論を持参され、学生時代にどう具体的に研究を進めるかということを示された。
続いて、池谷信之(明治大学黒耀石研究副センター長)さんから、黒曜石産地推定の原理についての講義があった。その後、諏訪間順(明治大学黒耀石研究センター客員研究員)さんから、 「旧石器時代史を編む 」のタイトルで、相模野の編年研究の実践例が示された。
◆ 10月8日
8日は、中村由克(明治大学黒耀石研究センター客員研究員)さんから、「石器石材の見方 」と題し、多様な遺跡出土の石器の石材をどう鑑定するか、スライドとともにその観察ポイントが示された。
続いて、すぐれた石器製作者である大場正善(山形県埋蔵文化財センター研究員)さんから、石器製作の理論についての講義とともに、実演がなされた。多様な道具を用いて剥離を行う大場さんの動作に、みな見入っていた。
昼休み、須藤隆司さん(明治大学黒耀石研究センター客員研究員)の案内で、会場前に広がる鷹山遺跡群を見学した。ローム層の露出地点からは、黒曜石の旧石器がひょっこり顔をのぞかせており、一堂興奮した。
同日午後は、大場さんの講義などに基づいて、参加者自身が製作を行った。指導には、やはり石器製作のベテランである鈴木美保さん(東京大学総合研究博物館)と金彦中さん(東北大学大学院)が加わった。
参加者は、白滝産黒曜石のほか、山形の珪質頁岩、八風山のガラス質黒色安山岩など多様な石材を使って、思い思いの石器製作にチャレンジした。
すでに何度も石割りをした経験があるものから、ほぼ初めてという人間までいて、製作された石器の形はさまざまであった。巨大な石鏃をつくったものものもいれば、いち早く押圧剥離を習得して器用に細石刃を剥がした参加者もいた。
石器製作と並行して、黒耀石研究センターの分析室において、黒曜石の原産地推定が池谷副センター長の指導のもと実践された。参加者の持参した茨城県内の発掘資料であるナイフ形石器や掻器が分析器のステージに乗せられた。大方の予想通り、近隣の高原山産の黒曜石が確認されたが、少量の諏訪産黒曜石も見いだされ、ため息がもれた。
◆ 10月9日
あいにくの雨模様となったが、最終日は、原産地見学である。
朝は、大竹憲昭さん(明治大学黒耀石研究センター客員研究員)の案内で、鷹山の星糞峠黒曜石原産地とその展示館である星くそ館を見学、縄文時代の黒曜石採掘坑やその地層断面などを観察した。
その後、数台の車に分乗し、つづら折れの旧中山道を上って、和田峠西地点の原産地を見学、さらにビーナスラインを通過して八島湿原から星ヶ台黒曜石原産地を堤が案内した。
御柱に使われる巨木が残る森の中、雨に濡れて耀く黒曜石の無数に小片に、みな心を奪われたようだった。
星ヶ台からふたたび車でセンターまで戻り、3日間におよぶ旧石器ワークショップは無事終了した。