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Mリーガーの一打③その3(10/19第2試合:滝沢劇場の開幕)

こんにちは。カザラキです。

今回も前々回の記事前回の記事に続き、10月19日の第二試合、園田選手、石橋選手、滝沢選手、白鳥選手の闘いをお伝えしたいと思います!前回まで、石橋選手が赤5筒切りリーチをしたり、白鳥選手が滝沢選手に赤5筒で放銃したりと、ドラマティックな闘牌をお伝えしましたが、今回はいよいよ完結編、南2局から続けていこうと思いますので、最後までどうぞお付き合いください!

さて、まず点棒状況から振り返ると、
園田選手 36300点
石橋選手 20900点
滝沢選手 31600点
白鳥選手 11200点

と、滝沢選手が園田選手を猛追する一方で、白鳥選手が前局の放銃で少し沈んでしまった展開となっております。しかし園田選手以外の選手はみんな親番も残っていることから十分トップが見える状況。さて、今回はどのようなドラマが生まれるのでしょうか。

それでは、GAME START!!

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まずは南2局。親の石橋選手にチャンス手が訪れます。2巡目にしてこの形。8筒切りで両面固定しながら4筒と7索のくっつきを狙いそのまま普通に聴牌すればリーチという戦術もありますが、石橋選手は大きく狙う西切り。トップとの差も15000点くらいあるので、このチャンスに一発で決めたいという一打ですね。

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それに対し、こちらは6巡目の滝沢選手。
もう手牌は七対子に固定しているため、あとは山読みと安全度のバランスをとりながら牌を残していく段階。と、ここで北をツモってくるのですが自身は一打目に切っています。そのままツモ切りするかと思いきや…

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北を手の中に残して2萬切り!!
そう、フリテンは聴牌するまでフリテンではないのです。山にもいそう、安全度も高い、ということで大事に北を抱えます。すると、、、

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お、お上手!!
次巡、北を引き戻し、七対子ドラ2の聴牌。6萬を切って、8萬単騎のチートイツでダマテンに受けます。
ちなみにダマにする理由ですが、以前の記事でご説明したような「捨て牌が七対子っぽい」ことに加えて、「点棒状況的にこれを確実にアガればトップとなり、2着以上で終わる可能性がそこそこ高くなる」こと、あとは「捨て牌的にダマなら切ってくれそうな人が多い」という理由がありそうです。

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と、この滝沢選手の6萬切り聴牌に何かを察知したのか、園田選手がその6萬を鳴いてカン6萬の聴牌を入れるのですが…。

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数巡後、滝沢選手が静かに8萬をツモり2000.4000。
ついに東4局には3600点しかなかった滝沢選手が、39600点のトップ目に立ったのでした!!

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「この勢いはまずい…」
流れなどは信じていないであろう園田選手ですが、さすがに3局連続で満貫以上のアガリを決めている滝沢選手に対し、何となく嫌な気持ちもあったかもしれません。
4巡目から9索をポンして遠いホンイツへ。しかし…

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7巡目。滝沢選手がタンヤオのみの聴牌を入れます。しかし待ちはカン4萬。以前の滝沢選手なら3筒切りのダマで受けるか、3萬あたりを切って好形変化を見ていたかもしれませんが、、

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今季の滝沢選手は一味違うのです!あえて言うなら前シーズンまでの打ち方が「対応する麻雀」なら、今シーズンは「対応させる麻雀」。
捨て牌を見ても悪くはない待ちという事で、積極的にリーチといくのです!

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しかしここに思わぬ伏兵が現れます。今まで影に隠れながらじわじわと肩を温めていた石橋選手が高めツモ跳満の追っかけリーチ!!ツモれば一気にトップへと躍り出る乾坤一擲の勝負をかけてくるのです。

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しかしそれに困ったのが園田選手。1件ならまだしも、2件リーチが入り、安全牌はゼロ。となれば筋やワンチャンスに頼りたくなるのですが、、

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ーーーもはや切れそうな牌はこれしか残っていなかったのです。7萬と1萬の筋である4萬切り。しかし、、、

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そう、滝沢選手のカンチャン待ちに放銃してしまうのです。裏が1枚乗って、痛恨の7700点放銃。一気にその点差は2万点近く離れ、今季初トップの可能性は非常に低くなってしまうのです。

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さすがにこの場面では4萬切りしかないように思うのですが、これまでも奇跡の放銃回避をしてきた園田選手。その目はもしかしたら別の選択肢も見ていたのかもしれません。

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そしてこちらは冷静に盤面を見る滝沢選手。

ここで最後に、滝沢選手についても少し紹介したいと思います。滝沢選手がプロ麻雀連盟に入会したのが21年前、19歳の時。そしてデビューして間もなく、その甘いマスクと年齢に似合わぬ雀力の高さで一躍脚光を浴びることになるのです(私はその頃あまり麻雀プロに詳しくなく、多井選手や村上選手さえ知らなかったのですが、滝沢選手は知っていました)。そしてG 1タイトルである王位戦での優勝・連覇を経験し、実力・人気ともにトッププロへと順調に駆け上がっていくと思われていたのですが、、

そう、それが実力なのか運の偏りなのか、誰もわからないままに、徐々に滝沢選手は調子を落としていくのです。一度は上位リーグに名を連ねていたものの、現在は何とC 1リーグ。タイトルも王位戦から遠ざかっていて、「滝沢は終わった」などと揶揄されることもありました。

しかしこれまで麻雀界へのの功績を評価されてか、そんな滝沢選手に最後のチャンスだと、麻雀の神様が手を差し伸べてくれるのです。
ーーーMリーグドラフト2巡目指名。
近年不振が続く自分が指名されることに若干の意外性を感じたかもしれませんが、それでも滝沢選手はこれを受け入れ、2018年シーズンに臨んだ結果、何と1年目で周囲の予想を覆す+314.8p(2位)の成績を残し、チームもレギュラーシーズンを首位で終えるのでした。

ただそんな 1年目の活躍とは裏腹に、2年目の2019シーズンは思ったように活躍できず、結果的にチームはレギュラーシーズン敗退、個人成績も−188.2pの29人中25位となってしまいます。そんな結果を受けた今季、チームは背水の陣で挑むと宣言、「上位入賞しなければ選手の入れ替えをする」と発表したのです。

「今までと同じ打ち方をしていてはダメだ」、この状況でそんな考えが芽生えてきたのでしょうか。滝沢選手の打ち筋は大きく変化し、これまで見てきたように、去年までには見られなかったアガリが飛び出しているのです。
「打ち方を変える」、それは野球の投手がフォームを変えるのと同じで、下手をすれば逆効果となるかもしれません。いや、得意な戦法を使わずに新しい戦法を使うとなれば、失敗することの方が多いでしょう。しかしそれでも挑戦する、そんな滝沢選手はここでトップをもぎとり、それを足がかりとして今季返り咲くことができるのか。滝沢選手の本来の実力が試されている中で、局面はいよいよ最終盤へと進んでいくのです。

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南3局。滝沢選手が圧倒的有利な状況ですが、実は園田選手にもチャンスは残っています。21700点差。つまり今から満貫を2回連続でツモれば300点差で逆転。

そしておあつらえ向きに、9巡目にこの手牌となります。5−8索と3−6筒をリーチしてツモれば満貫、裏次第では跳満まで狙える一向聴。と、ここで3索をツモって手が止まります。安全牌の西を残すか、攻撃的に山に残っていそう&高打点志向の3索を残すか。園田選手の選択はーーー

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西切り。
実はこの時3索は山に2枚全部残っていて、園田選手もツモる可能性はあり、逆に西は残り1枚だけだったのですが、、、

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直後、無情にも3索は上家の白鳥選手がツモ切り、逆に自分は残り1枚の西をツモって聴牌逃し!!。
そう、麻雀とは確率的に正解の牌を切ったとしても、失敗する確率も3分の1程度あるのであって、51:49の正誤差であれば100回に49回は失敗するものなのです。そして今回、園田選手はその確率の低い方を引いた、それだけの事なのですが、それ以上に受けたショックは大きいのです。
麻雀って、、そんなゲームなのです。

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そして結局、流局直前にようやく聴牌するものの、、、、

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時すでに遅し。さりげなく聴牌を入れていた石橋選手が軽く4萬をツモり、勝負は滝沢選手がかなり有利な立場でいよいよ半荘は大詰めを迎えるのです。

南4局。まずは白鳥選手が500点オールをアガり、命をつなぎます。

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そして続く南4局1本場。白鳥選手が好形の一向聴となる6索を切ると、、

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7巡目に5索を引いて聴牌。ツモれば満貫で、相手へのプレッシャーを兼ねてのリーチと行きますが、、、

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石橋選手もこの形。ただ安手・愚形・後手(プラス親リーチ)なら流石にオリるか回るでしょう、、と思いきや!!
ここで石橋選手は追っかけリーチといくのです!!

そう、普段はこの3つの悪条件では行くべきではないのですが、「オーラスでこの点棒状況という、誰も前へ行きにくい局面で黙っていたら親にツモられるのを待つだけとなり、3着目も譲ってしまう」という意味で行く価値があるのです(微妙な判断なので正解とも不正解とも言い切れないですが)。そして親もそのことを知っていて、いつもよりも愚形でリーチとくる確率は高い、このような理由もあっての渾身のリーチなのです。

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という二人の全身全霊のリーチ対決が巻き起こっているのですが、、、あれれ?この人も安牌を切ってしれっと聴牌、、、そして、、、

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2人リーチに挟まれた園田選手が仕方なく切り出していったのは対子の南!ということは、、、先ほど聴牌していた滝沢選手のアガリとなるのでした!!

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まさか滝沢選手に放銃するとは思っていなかったであろう園田選手ですが、順位が落ちない1600点の申告に安堵した表情。

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そして最後まで手に汗握る白熱した若手選手同士の争いは、滝沢選手の大逆転劇となった幕を閉じたのでした。

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さて、実は滝沢選手、この日の第一試合にも出場していて、その時はまさかの箱下のラス。その悔しさを胸に連投したわけですが、見事その鬱憤を第2試合で晴らし、ぎこちないながらもハンサムな笑顔を見せてくれるのでした。

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というわけで今回は3回にわたり、「若手選手間での闘い」「だまし合い」をテーマに書いてきましたがいかがだったでしょうか。

思い返せば滝沢選手から園田選手への8000点放銃から始まり、その後は園田選手の素晴らしい8索打たずがあり、石橋選手の赤5筒切りリーチは麻雀ファンを揺るがせました。その後は白鳥選手の跳満ツモや滝沢選手の倍満ツモがあり、南1局の白鳥選手から滝沢選手への跳満放銃は麻雀の恐ろしさを思い知らされました。そしてそれから終局までは滝沢劇場。今までとは異なる様々な打ち方を見せてくれました。

このような見どころ満載の試合を見せられると、将来の麻雀界も安泰だとも思いたくもなるのですが、そうは言っても中堅・ベテラン勢と比べるとやはり完璧とは言えない若手選手たち。いつか麻雀界のレジェンドたちに追いつけるように、今後も引き続き切磋琢磨してもらい、我々もその雄姿を見届けたいと思います。そして自分もその舞台に立てるようにと祈りながら(祈るだけじゃダメですね、努力します)、今回の記事を終えたいと思います。

というわけで、完結まで時間がかかって申し訳なかったですが、3回目のMリーグ観戦記は以上となります。今後も気になった場面など、幅広く取り上げていきたいと思っているので、この記事が面白いと思った方は是非フォローをよろしくお願いいたします!また、「スキ」やサポートなどもしていただければ更なる励みになりますのでよろしくお願いします。それではまた!

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