Mリーガーの一打②その2(10/9 第2試合:小林選手の「守り」と沢崎選手の「粘り」)
はいどうも。ご機嫌いかがでしょうか、カザラキです。
今回も前回同様、10/9の第2試合、萩原選手、松本選手、小林選手、沢崎選手の対戦カードから、南場の闘牌を見ていきたいと思います。
一応前回の模様を振り返ってみますと、点棒状況は
萩原選手 15500点
松本選手 20300点
小林選手 39100点
沢崎選手 25100点
となっており、小林選手が依然有利ですが、まだ他の選手も十分逆転可能な点差となっているので、まだまだ分からないところですね。
ただ先に言っておくと、南場は大きく点棒が動き、最後にはトップをめぐる大きなドラマもあったので期待して記事を読み進めてください!
では前置きはこれくらいにして、早速見ていきましょう。GAME START!!
さて場面は南1局、こちらは沢崎選手の手牌でございます。
3巡目に7萬をツモってきたのですが、早くも發の対子落としに入ります。やはり一流の選手となると簡単なアガリだけでなく、しっかり最高形も見ています。はい、この手牌の最高形とは何でしょうか。答えは下の画像。
そうですね。345の三色同順。今のところ6ブロックの2シャンテンですが、仕上がれば跳満以上のアガリも見込める勝負手です。
ただ7巡目、ツモって来た7萬をそのままツモ切りして6ブロックを維持すると、9巡目に裏目となる7萬を引いて、次は5ブロックに構える89筒落とし。トッププレーヤーと言えど、やはり5ブロックに構えるか6ブロックに構えるかの判断は難しいところです(一般的な手では5ブロックに構えるのが基本と言われてはいますが)。
少し遠回りをしてしまった沢崎選手を横目に、東場はあまり目立つことができなかった萩原選手にようやく聴牌が入ります。ツモり三暗刻でのリーチ、2索6索待ち!
誰かが追いかけてくる前に早く引きたいところですが、、、
そうですね。遠回りしたとはいえど、勝負手は勝負手。ついに沢崎選手がやってきました。追っかけリーチ!!(とはいえ、実は1巡前の7萬切りで聴牌してたんですが。沢崎選手はこういった一巡回してのリーチが非常に多く、恐らくそれも自分の手牌情報をあまり出さないようにするための工夫なのだと思います)。
そしてそのマムシの餌食となったのが、、
先行リーチを掛けていた萩原選手!!痛恨の8000点放銃となってしまいました。逆に沢崎選手はこれでトップ目がぐっと近づきました。
そして南2局。もう沢崎選手が背後まで来ている中、小林選手の手牌も徐々に育ってきています。平和の一向聴のまま進めると6筒か8萬切りとなりますが、、
6索受けがかぶっていて、9索が来てもタンヤオが消えてあまり嬉しくないという理由からか、7索打ち。あとは先ほどの沢崎選手と同じ理由もありますね。そう、1手変わりで456の三色同順も狙えます。
しかしそこに待ったをかけたのがトップ争いに加わりたい親の松本選手。萬子をふんだんに散りばめた捨て牌(6巡目から5萬、7萬、1萬、9萬、5萬切りでリーチ)で、カン8萬待ち。これはさすがに誰でも切ってしまうんじゃないかと思っていると、、、
まずは萩原選手が一発で8萬キャッチ!!
東はドラなのでツモ切りするかと思っていたら、、、
何と自分の手を壊す5萬打ち!!
すみません、少し萩原選手のことを見くびっていました。確かに手牌の価値はあまりないのですが、あの捨て牌に対し、これは誘惑に負けない素晴らしい一打だと思います。
続いて小林選手も8萬が切りたい手格好になりました。それなりに手牌の価値もあるため8萬くらいは切るかなと思っていたら、、
はい、流石ですね。前回の記事でもお話ししましたが、やはり小林選手の守備力は超一流。実はこの松本選手の捨て牌も、小林選手にとっては違和感があって、8萬は危険牌の一つだと感じていた様子。詳しくは下の動画でチェックしてもらいたいのですが、やはり最終手出しの5萬が不自然だった(なぜ5萬が最後まで残っていたという疑問があった)ということで、8萬は切るべきではないと判断したんだそうです。いや、話を聞いてみれば納得できますが、それをあの舞台でやってのける、素晴らしいですね。
と説明しながらここで沢崎選手を出すのは申し訳ないのですが、同巡8萬をつかんだ沢崎選手がツモ切ってそれを松本選手がロン。3900点をアガるという形で局は終わりました(いや、それが普通ですよ)。
というわけであと一押しでトップまで狙える位置まで来た松本選手ですが、やはりそこに立ちはだかるのはこの男、沢崎選手。さっきの復讐だと言わんばかりに、手牌が少しずつ育ってきて、ホンイツの一向聴。白をポンするだけで満貫の聴牌です。
それに対し最初の聴牌を果たしたのがこの男、萩原選手。
しかし、スターには似つかわしくないこの価値のない聴牌は何なのでしょう!
点棒的にもこのままリーチはさすがになさそうなのですが、選択肢が多い…。大きく狙う中の対子落とし?それともとりあえずの8筒切り?色々な考え方があるとは思いますが、萩原選手が選択したのはこの一手。
3萬を切って、3色同順や中を暗刻にしての聴牌を狙います。しかしその刹那、大物手を聴牌したのは、、
はい、先ほどの沢崎選手。白を鳴くまでもなく、門前で2筒を引いて聴牌。中を切って、カン8筒で満貫聴牌です。
あれ?8筒?なんだか嫌な予感がしませんか?確かさっき見た手牌には8筒が浮いていたような、、
うぎゃー!!あったーー!!
というか、この画像はもう切ってしまった後。タイミング悪く、7萬を引いたところで、一旦8筒を切って聴牌を取ってしまいました。手順に関しては甲乙つけがたいですが、結果的に8筒をダマテンに放銃したのは運がないとしか言いようがありません。
ただついてない、そんな言葉でしか今日の萩原選手は語れないと思います。そして持ち点はマイナスとなってしまいました、、。
そして逆にトップにぐいっと近づいたのが沢崎選手。南3局もノリノリで9筒から仕掛けます。3巡目で筒子のこの形。小林選手の親を大物手で流すことができれば大きなアドバンテージをものにすることができますが…
そうはいかないですよね。5巡目、小林選手は6索を引いて567の三色同順の一向聴。しかし疑問じゃないですか?どうしてこうも魔法のように三色同順ができていくのでしょうか。それはやはり一つの答えは序盤の構想力だと思います。与えられた手牌から、高打点の種を残して、それが成就するように切り順を調整する、その結果様々な役が狙えるのだと思います。
…そして2巡後、来ました。高め三色同順のリ――――――チ!!!
そしてこれに捕まってしまったのが、、、3着目の松本選手。一気通貫の見える一向聴で…
…出てしまいますよね、ワンチャンスの8索くらいは。ここで満貫をアガればトップも見えるだけに攻めることはできませんが、結果的にはトップ争いからの脱落を意味する12000点の放銃となってしまいました。
萩原選手も松本選手も脱落してしまった今、卓上には2人しかいません。小林選手と沢崎選手。
南3局1本場。小林選手はもう一押しして更に有利な状況に持っていこうと、8巡目、上家の8萬をチーしてジュンチャンの聴牌。3萬でアガれば点パネ+300点の4200点を手にすることができますが…
やっぱり来るのですよ、この方が。かなり広い一向聴だった沢崎選手が、ついに待望の4索を引き入れ、当然という顔つきでリーチ!!!
と、その同巡、小林選手が掴んだのは…沢崎選手のど高めの牌、4筒。一発で打てば跳満。裏ドラによっては倍満までありますが…。
もうみなさんもお分かりですね。これまでも守備力をいかんなく発揮してきた小林選手がここで放銃するわけがありません。あっさりと手牌を殺す2萬打ち。
おっと失礼。この方はただの道具である麻雀牌を擬人化などするわけはありませんね。ただ、勝つために有利な打牌をした、それだけです。
しかしそれでも沢崎選手の勢いはまだまだ衰えることはありません。前巡に追っかけリーチを放った萩原選手の一発目のツモが…一筒!!またしても沢崎選手に三色同順の満貫を放銃してしまいました。
そしてこの放銃で沢崎選手はまたしても小林選手に肉博し、いよいよ運命のオーラス。その点差は実に3300点!
8巡目、沢崎選手からのリーチが入ります。リーチのみのカン7索。愚形の安手、しかも一手変わりでチャンタなら、リーチは避けた方がいいと習った方もいるかも知れませんが、このリーチ、実は大きな意味を持っているのです。
はい、こちらがリーチ一発目の松本選手の手牌。7筒を切ればタンヤオ赤赤の聴牌なのですが…
あっさりと6筒を打って聴牌崩し。そう、沢崎選手が狙っていたのはここなのです。つまりこの点棒状況で積極的に攻め返してくる選手というのは限られていて、となればリーチでプレッシャーをかけて相手降ろす、そんな戦略が意味を持ってくるのです。
そして特に一番攻めにくいのが松本選手。ここで攻めて放銃するとラス落ちの可能性が浮上するため、上図の手牌でもなかなか攻めるのは難しいのです。
また、萩原選手については押しても順位アップの可能性は非常に低く、となれば無理やり攻めることはしません。
残る小林選手は、チャンスがあればアガリに向かって攻め返し、半荘を終わらせたいところですが、今局は手にならず。
そして沢崎選手の思惑通り、この局は誰も攻めてこぬままに流局。
続く南4局1本場も同じような展開。沢崎選手が早々に發を鳴き、他の選手はなかなか攻める機会を見いだせず、流局。ついに沢崎選手が小林選手を逆転したのでした。
そしてこの南4局2本場が二人の戦いに終止符を打つ実質的に最後の局になったのですが・・・じっくり見ていきましょうか。
まずこちらは小林選手の手牌。沢崎選手との点差は3700点で、供託にはリーチ棒が1本。2本場なので、出あがりなら2600点以上、ツモなら400点.700点でも逆転できる状況。この手なら十分ということで、当然の白の仕掛け。
しかしここまで粘って最後逆転されてたまるかと、やはりこの方がやってきます。しかも今回は打点もある三色同順の3萬待ち。捨て牌には6萬もあって、出アガリも十分期待できる中でリーチ!
その後の小林選手。愚形まじりの一向聴なら不利と見たか、西を切って回っていきます。
しかしベタオリに徹しても、なかなか安全牌は増えず、残り2回をしのげれば流局というところでついに手牌の中全てが危険牌となってしまいました。
こちらがその時の状況ですが…そう、もう通りそうな牌はないのです。あえて言うならば筋の3萬と、ワンチャンス&6萬を先切りしている理由から7萬のどちらかは比較的通しやすそうなのですが…
場に走る緊張感。場を見ながらじっくり考えます。これまで何度も絶体絶命の状況を、持ち前の守備力で回避してきた小林選手。今回もそのたぐいまれな能力で、正解を導き出せるのでしょうか。
―――そして30秒後、小林選手が河に放った牌は…
―――当たり牌の3萬。
試合を決定づける、沢崎選手への12600点の放銃となりました。
その手牌を見て、役と点数を確認すると「はい」と言い、いつものように納得したような表情で、静かに点棒を渡します。
もしこれが最終打牌なら、7萬を切っていたんだろうと思います。ただ次巡、もう一度牌を切らなければならない、となると複数持っている3萬の方が効率的。たった1巡、されど1巡。麻雀に「パス」はない以上、こんな放銃も生まれてしまうのです。
そして点差が約3万点となり、実質消化試合となった南4局3本場。不思議なことに、それまで和了が難しそうだった沢崎選手以外の3名の手牌は呪いが解けたかのように軽くなります。萩原選手、松本選手が仕掛ける中、小林選手はスピードを合わせるようにいつものように冷静に6索を鳴き、1000点は1900点をアガりこの半荘に終止符を打つのでした。
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さて今回は小林選手の守備力を主なテーマとしてMリーグの試合を見てきましたがいかがだったでしょうか。最後こそどうにもならない状況になってしまいましたが、守備に不安のある方にはとても参考になったのではないでしょうか。また機会があれば再度小林選手の打ち方について記事を書きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
一方こちらはオーラスの大逆転を果たした沢崎選手。「今日は返さないと思ってました」と満足した様子でインタビューに答えていましたが、小林選手と違い、独特の手順を踏んだ沢崎選手も今回見どころは多かったのではないのでしょうか。
今回は小林選手を主にフォーカスしましたが、攻撃力とその手順が武器の沢崎選手についても改めて記事を書いていきたいと思っていますのでご期待ください。
では改めまして、沢崎選手、おめでとうございます!!
というわけで、2度目のMリーグ観戦記は以上となります。今後も気になった場面や気になった選手の打ち方など、幅広く取り上げていきたいと思っているので、この記事が面白いと思った方は是非フォローをよろしくお願いいたします!また、「スキ」やサポートなどもしていただければ更なる励みになりますのでよろしくお願いします。それではまた!
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