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Mリーガーの一打⑤その2(11/27第1試合:「大人」の駆け引き)

皆さんお久しぶりです、カザラキです。

さて前回の記事で、私が七段に降段したというどうでもいい話をしたのですが、その1週間後である昨日、なんと天鳳界の第一人者であるZEROさんも七段に降段したと、Twitterでは大きく取り上げられていました。というのもZEROさん自身が、「七段に降段したらゼロマガ(定期マガジン)をやめる!」と宣言したことが理由で、本当に辞めるかどうかは実際わからないのですが、皆さんはこの宣言についてどう思うでしょうか。

個人的には(注目を集めるという目的を除けば)この宣言はやはり無謀だったのかと思います。というのも(自分にも言い聞かせるつもりで書いていますが、)六段降段ならまだしも、七段降段はいくら強くても回避が非常に難しく、歴代天鳳位も数多く経験していること。つまりそのくらいのブレは人間の能力では制御不可能なのです。戦術書が多く出回り、放送対局で麻雀強者の打ち筋をじっくり見られる現在、平均点以上の打牌を生み出せるプレーヤーは急増していて、その中で彼らに継続して勝ち続けるというのは麻雀のランダム性を少し見誤ったのではないかと思います。

と、あまり外野から色々言うのは良くないので、ゼロマガの復活に期待しつつ、同じ七段としてZEROさんと戦うことを楽しみにしたいと思います。

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と言うわけで、前回のMリーグの続きへと参りましょう!

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前回は藤崎選手と沢崎選手が、本手を入れてくる村上選手と黒沢選手に対し、上手くかわし手をアガってベテランとしての試合巧者ぶりをいかんなく発揮する展開。そして東場は以下の点数で終え、いよいよ後半戦が始まるのです。

村上選手 18400点
沢崎選手 27300点
藤崎選手 33300点
黒沢選手 21000点

藤崎選手と沢崎選手が一歩リードしていますが、まだまだ点棒は僅差。ここから2人が上手く点棒を守り切れるか、あるいは村上選手と黒沢選手がそこに風穴を空けられるか。それではGAME START!!

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南1局。まずは親の村上選手が7筒を引いての一向聴。8索がドラだけに普通の選手なら仕掛けそうですが、メンゼン主体の村上選手、ラス目だけに1枚目はスルーする可能性もありますが…

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その前に先に仕掛けたのは南家の沢崎選手。ドラが3枚ある手牌で、456の三色狙い。さて、この手牌では鳴く人鳴かない人どちらもいるでしょう。更に鳴く人も、そのあと何を切るかでも意見が分かれそうですが、皆さんならどう進めるでしょうか。

沢崎選手の選択は、鳴いて9索打ち。とりあえず3900点狙いのアガリやすさを見た一打ですね。ドラが重なったり赤5筒が来れば満貫へとジャンプアップする可能性もあります。逆に23萬を切り出していけば満貫がほぼ確定する一向聴ですが、なかなかアガりにくそうな一手。比較的アガれそうな3900点か、アガリにくそうな8000点か、点棒状況も考慮に入れると沢崎選手が選択した89索落としの方がいい気もしますが…

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狙い通り2枚目の4萬も鳴けて、カン5筒の聴牌。赤5筒が来れば最高で、期待しながらドラの8索をそっと河に置くのですが…

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ここに参戦したのが西家の藤崎選手。沢崎選手が切ったドラの8索を鳴いて、發の後付けながらも周りにプレッシャーをかけていくのです。

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しかし更にその2人に追いついたのが北家の黒沢選手。7索を引いて聴牌するのですが、、、うーん、チートイのみの聴牌…。ドラをポンしている藤崎選手と、すでに2副露していてドラも切り出している沢崎選手がいるので2・6筒は少し切りづらいのですが…

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トップでもないのにまだ白旗は挙げられないと、2筒から押し!リーチはかけていないことから、藤崎選手の中筋になっている6筒で静かにかわそうと考えているのかと思いきや…

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ここで持ってきたのは1萬。はて…ここで考える黒沢選手。

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「あら?捨て牌的にも七対子に見えないし、これなら掴めば出てくるかもしれないわね。まだ3着目で点棒も欲しいし、親番もあるのだから、ここはまっすぐ…」

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と思っていたかは分かりませんが、強気のビーナス、堂々と6筒を切ってリーチへと向かうのです!

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こちらはそれを受けた村上選手。
聴牌気配の沢崎選手、ドラポンの藤崎選手、そこにリーチをぶつけてきた黒沢選手と、まさに全員が敵という苦しい状況。そして少考の末切り出していったのが、、、

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流石にここは粘れる状況ではなく、この局でのアガリを諦める6筒切り。ラス目の親番という状況ではできる限りオリたくないのですが、これは流石に無理。まだ大きく点棒が減った状況でもないので次局以降に望みをつなぎます。

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そして沢崎選手。こちらも聴牌ながらも愚形の3900点ではなかなか押すことができません。2着目ということもあり、静かに北切り。

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そして周りをオロす事に成功した黒沢選手、あとはゆっくりツモるだけですが、その一発目がなんと、、、!

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そう、いるのですよ、一発目に1萬が!!
しかも裏ドラ6萬の3000.6000点!!

藤崎選手、沢崎選手がコツコツ積み重ねたアドバンテージを一気にひっくり返し、逆転でトップ目に躍り出たのです!

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さあこのまま終局まで突っ走る、そんな意気込みの黒沢選手の影で、一気に状況が悪くなったのが跳満の親っかぶりをくらったこちらの村上選手。
残り3局でどこまで取り戻せるか、出来るだけ高打点で攻勢をかけたい場面で南2局のこの手牌。皆さんは何切りが好みでしょうか?

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4萬、2索、3索のそれぞれに長所短所はあるかと思いますが、村上選手の選択は打4萬。
赤5萬引きは痛いですが、4索か6索を引けば平和の聴牌。

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…が、その後引いてきたのは2索。前巡5萬も引いてしまったし、もうここはリーチ…

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とはいかないのですね。まだ猶予はあると、手出しで2索打ち。顔は例に漏れず真っ赤っかなのですが、心は冷静。そして次に引いたのが…

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はい、流石にもう聴牌取らずはやり過ぎですね。ここまで来れば6-9索のリーチドラ1でもやむなし。ツモ裏1で満貫、というわけでいつものようにはっきりした発声で「リッチ」と宣言するのです。

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しかし同巡、黒沢選手もなんと七対子ドラ2で聴牌するのです!
5筒を切れば聴牌ですが、一発目はとりあえず安牌の4萬切り。しかし…

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はい、来ました。4萬が全部見えていて、山に残っていそうな3萬!ここで黒沢選手は当然のごとくーーー

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ドラ3なら当然!と言わんばかりに元気よく危険牌である暗刻の5筒を切ってリーチと行くのです。これをアガれば2局連続の七対子ドラ2の跳満となりますが3巡後持ってきたのは…

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流石にそこまで麻雀思い通りにならないですよね、3巡後6索をつかんで村上選手に放銃。裏ドラが1枚乗っての5200点となるのでした。

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そして南3局、点棒状況はこの通り。トップからラスまでが11700点差と、かなり近い状況。村上選手は3900点くらいアガればオーラスで満貫条件ができますがーー

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なかなかゆっくりと進ませてくれませんね、このメンツは。まずは沢崎選手が南からの仕掛け。3着目なのでもう少し打点の種が出来てから鳴く手もありますが、門前で高打点を作りに行くと先手を取るのは難しそう。
それならこの局はかわしの局とし、ツモが良ければ500.1000点の同点2着でもいいという考えでしょう。

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一方こちらは門前勝負。ドラを引いての一向聴。まだまだオリる気は毛頭ありません。

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そしてこちらも門前勝負手。ドラを浮かせてくっつきを狙いつつ、ダイレクト7筒ツモで3-6索リーチ、6索ツモでも出上がりしやすい7筒待ちリーチが打てることからやはり4筒打ちが最適の一打なのだと思います。ちなみに3索や2萬まわりを引いた時は89筒落としが今の点棒状況ではおすすめです。

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と、そんなところに迷えるツモ。むむむ、何切り?

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やはりさっきの理由から、ツモ切りがベストですかね。2筒ツモは89筒を落として更なる高打点変化が見ることができ、逆に2萬を切ってしまうと2萬ツモや3萬ツモが痛すぎるのです。

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と3名が一向聴になっている段階での藤崎選手の手牌がこちら。
あれ、この手から3萬切り!?

誰もリーチをかけておらず、沢崎選手もまだ一つ鳴いただけなのですが…。そう、やはり大人なのですね。こんな手牌からは到底周りに追いつけないと、すでにオリる準備を始めるのです。そしてこのリスク管理が身を結びーー

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2巡後、村上選手からついに高め三色のリーチが入るのです!

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しかしそのリーチ宣言牌をチーして聴牌したのが沢崎選手!もう手の中に安牌はないということでまっすぐ向かっていきます!

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一方2着目の黒沢選手もドラを引いて臨戦体勢!危険牌の1萬を切って、一向聴になるのですが……

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ツモの声を発したのは村上選手!
ただ手元に引き寄せられたのは安めの3索で、期待の裏ドラも乗らずの700.1300点。攻めてきている相手に対して、アガリ牌をツモ切るのはやり過ぎですが、アガってもまだラスのままの村上選手にとっては依然厳しい状況のまま、オーラスに突入するのです!

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ではそれぞれの配牌を見ながらオーラス前の点棒状況を確認していきましょう。

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まずは現在2着目で親の黒沢選手。
トップを取るためにはとりあえずアガリ続けることが必要ですが、次局以降楽になるためにはできるだけ高い手をアガりたいところ。ホンイツを見て、萬子を切っていく手もありますが、ここは無難に北から切っていきます。

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現在ラスの村上選手は満貫なら出アガリでもトップ、5200点出アガリか3900ツモで2着、2600点出アガリか2000点ツモで3着と、色々なパターンがありますが、そこでもらったこの配牌。發の対子と赤が1枚。アガれば3着は堅そう、ドラが来れば2着、トイトイになればトップが見える感じでしょうか。まずは北を合わせていきます。

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3着目の沢崎選手にとっては6400点出アガリか5200点ツモでトップ、2600点出アガリか2000点ツモで2着。という状況で、なかなかの配牌!メンゼンリーチがかけられればトップが狙えるということで、北を残して、他家に重なる前に南から切っていきます。

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そして北家の藤崎選手はトップ目という状況で手にした配牌がこちら。なんといっても中対子という特急券がありがたい!鳴ければ早めの決着もあり得そう。

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このような配牌の中、大きく前進したのが沢崎選手。早くも4巡目に二盃口まで見えるタンヤオ七対子の一向聴!さっきも言ったように、6400点出アガリか5200点ツモでトップ。あとは山にある牌を読んでいく作業へと移っていきます。

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と、次に一向聴を果たしたのが藤崎選手!中を鳴いて、場に高い筒子を嫌っていきます。

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そして皆に遅れをとるわけにはいかないと、村上選手も發を鳴き、8萬切り。まだドラ引きからの2着狙いや何かが重なってのトイトイ変化も見据えています。

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8巡目、こちらは沢崎選手。7萬を引いて、タンヤオ七対子とタンヤオ一盃口を天秤にかけた3筒切り。いよいよ場が煮詰まってきました…。

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そんな状況でいらないドラを引いてしまった藤崎選手。放銃すれば一気にラスまで見える状況で、いったん保留の中切り。

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そんな中、最初の聴牌を入れたのが村上選手。9萬を引いて、5筒を切れば2600点聴牌で、アガれば3着。ただここで5索をカンして、新ドラが乗ったり5筒にうまくくっつけばトップまで見えるのですがーーー

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いや、ここは大人の対応。現実路線の5筒切りで、3着を見ながら2筒ポンからのトイトイに備えます。

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一方こちらは沢崎選手。3索を引いて、2萬切り。ここでまさかの四暗刻一向聴となるのです!!

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しかしその2萬を鳴いたのがトップの藤崎選手。守備型といえど、押すべき場面では押すのです、ようやく辿り着いたカン3索の聴牌で、ビシッとドラの6筒切り!!そしてこの熱い状況でついに手牌を開けたのはーーー

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3着へと着順を一つ上げる、村上選手の700.1300点!!!
本人としては大満足とはいかないと思いますが、最低限できることはした、と言うことでしょうか。やはり厳しく細かく打ってくる相手に対してはこれがギリギリの妥協点。そしてその結果トップで半荘を終えたのがーーー

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はいこの方、藤崎選手。最初から最後まで緻密かつ抜け目のない打ち回しで「大人の駆け引き」を制したのでした。

さて、ここまで書いておいてなんですが、やはり年齢と打ち方は何かしら関係があるのでしょうか。今回出場した4名は(黒沢選手は少し違うとして)、みなさんやはり細かい点棒調整や相手の狙いを見据えたうち回しが多いような気がするのですが、みなさんはどう思われたでしょうか。

はい、という疑問と共に今回の記事はこれで終わりとさせていただきます。最近は麻雀が不調なことに加えて、生活でも疲れやすくなっていて、なかなか思うようなペースで記事も書いていけないのですが、引き続き読んで頂ければありがたく思います!またフォローや「スキ」、サポートなどもよろしくお願いします。それではまた!

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