1本の糸がアクセサリーになるまで
トリプル・オゥnote編集部です。
私たちが作る「糸のアクセサリー」は、たった1本の糸から、何人もの職人の手を通って生まれます。他にはあまり見ない「糸だけで作られたアクセサリー」。一体どうやって作られているのだろう、とイメージできない方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は私たちがどのように糸のアクセサリーを作っているのか、その工程をご紹介したいと思います。
デザインや素材を決めてから、実際にお客様のもとへ届くまで。トリプル・オゥのアクセサリーが辿る道をお伝えします。
①発想・素材選定・デザイン
私たちがアクセサリーを作る上で、決めているのは「糸から作られている」ということだけ。その生まれ方は、実は商品によってさまざまです。デザインが先に決まる場合もあれば、素材が先に生まれることもあります。
「今度は、こんなアクセサリーを作ってみたらどうだろう?」
「次はこんなふうにしたら、お客様が喜んでくれるのでは?」
そんなひらめきや発想から、よりお客様にとって良いアクセサリーになる方法を考えていくため、決まったルートがないのです。スケッチでデザインしたものを、紙や生地で仮のものを作ってみて、身につけてみたときの印象をシュミレーションすることもあります。
届けたい相手や価値によって、近道は変わる。「お客様にどんな喜びを届けたいか」を考え抜くのが、この最初の工程です。
②プログラム作成
紙の上で生まれた発想が、形になるための第一歩。まずはパソコンで、ミシンの動きをプログラムしていきます。
カーブする部分は針をどう動かすか、切れやすい素材をどのように扱うか、強度を持たせる刺繍の仕方……などなど、ミシンや素材の特徴に合わせて、少しずつ調整していく細かい作業です。
同じ商品のプログラムでも、素材を変えるだけで、できあがりが変わってくるのが難しいところ。素材ごとに試作をしてはプログラムの調整を繰り返す日々。一旦データを作れば終わり、というわけではありません。
また、一度仕様が決まり、生産がスタートしたアイテムであっても、常にプログラムを見直しながら改良しています。日々新しい経験を積んでいくなかで「ここを変えたら、もっとよくなるかもしれない」と思ったものは、取り入れていく。まだ誰も見たことのないアクセサリーの形を模索する私たちに、ゴールはないのかもしれません。
試作の末、ここから①のデザインや素材選びに戻ることも。試行錯誤しながら、それぞれの素材やデザインに一番合ったプログラムを作り上げる。実際に刺繍をし始める前の大切な工程、トリプル・オゥの心臓部の工程です。
③ミシン
プログラムが完成し、生産体制に入ったアクセサリーを刺繍するミシン工程。「多頭機」と呼ばれる1台に10の刺繍機がついた大きなミシンは、ひとつのプログラムで同時に10個同じものが刺繍できます。
ここで、糸のアクセサリーを形作る「立体の刺繍」の秘密をご紹介。
私たちはアクセサリーを作るとき、「水溶性の不織布」という特殊な布に刺繍しています。水溶性の名のとおり、水に溶ける布です。刺繍し終えたものをお湯で溶かすことにより、最終的に刺繍の奥まで正真正銘、”糸のみ”の立体アクセサリーができあがります。
「土台がなくなる刺繍」なんて、聞いただけで不安定な響きですよね。土台となる布が溶けても、ちゃんと形を留めておけるように考慮して、プログラムを作っているのです。
この水溶性の布、水に溶けるくらいなので、とにかく水分に弱い。天気によっては、空気中の湿気にまで影響されてしまう曲者です。雨の日や梅雨の時期などは、何度も張り直さなければうまくいかない。ミシン担当は、この布を扱う難しさと日々向き合っています。
布だけでなく、糸の素材や太さによってもその都度ミシンの調整が必要です。天候や素材、作る商品の種類、ミシンそれぞれの個性まで。一言で「ミシン」と言っても、考えることが本当にたくさんあります。
ミシン担当は、日々考えながら感覚を研ぎ澄ませています。機械作業ではなく、これも「人の手」によって作られている工程です。
④洗い
刺繍が完成したら、水溶性の不織布を溶かす「洗い」の工程へ。
実は、ひとつひとつ、スタッフが手洗いしています。溶けた不織布の糊っぽさが残らないように、素手で確認しながら、しっかりと。
その洗い方や、お湯の温度、浸け置く時間などは、商品によってさまざまです。例えば、からまりやすい商品は事前に束ねてから洗うなど、これまでの経験から培ってきた「レシピ」と呼ばれる社外秘のルールに基づいて、それぞれ適切な洗い方で丁寧に仕上げていきます。
ここは「刺繍の土台がなくなる」という、刺繍にとっては少し緊張する場面でもあります。ひと手間ふた手間をかけて、きれいに仕上がるように注意しながら洗います。
こんなふうに洗っているのを見ていただければわかるとおり、トリプル・オゥのアクセサリーは水に濡れても大丈夫。汚れや汗が気になったら、いつでもご自宅で手洗いしていただけます。洗い方は、商品に同封した説明書を見てみてくださいね。
⑤脱水・乾燥
洗ったあとは、脱水と乾燥。なんだか「糸らしい」工程です。
ここでよく乾燥させないと、カビの原因にもなるのでしっかりと。天井からぶら下げて干すこともありますが、多くの場合は「バキューム」と呼ばれるテーブルの上に置いておきます。
このバキューム、空いた穴から掃除機のように空気を吸ってくれるテーブルで、本来は布をアイロンがけする際にシワなくピタッとさせるためのものです。そこにアクセサリーを置くことで通常よりも早く乾くことに気付き、今ではアクセサリーの乾燥に活躍しています。
⑥仕上げ
最後は、仕上げ作業です。検品も兼ねて、ひとつずつ丁寧に。熟練の職人たちが手作業で確認していきます。
通常の刺繍には裏表があり、縫い終わりの糸は裏に出しますが、アクセサリーには裏がありません。ミシンの刺繍だけでは必ず残ってしまう5mm程度の縫い終わりを、手作業で縫い込むことで、どこで糸が終わっているかもわからない、どこから見ても美しいアクセサリーになります。
何らかの要因で糸がはみ出していれば針で玉の中に入れ込み、形が崩れてしまっていたら整える。細かい作業ですが、この最後の仕上げがトリプル・オゥのアクセサリーの繊細さにつながっています。
機械も手作業も、私たちの「技術」
手作業では難しい精度の高さは機械で。機械にできない細やかな処理は手作業で。
機械と手作業。そのどちらが欠けても、トリプル・オゥのアクセサリーは完成しないことがわかっていただけたかと思います。どちらも、私たちが培ってきた、胸を張って誇れる「技術」です。
技術と想いを詰め込んだアクセサリーは、全工程のあとしっかり梱包されて、お客様のもとへ届きます。箱を開けたとき、身に付けたとき、その辿った道のりを想っていただけたら嬉しいです。
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