平成中村座 姫路城公演 第一部「播州皿屋敷」「鰯賣恋曳網」

「播州皿屋敷」

配役
細川家家老 浅山鉄山 中村橋之助
腰元 お菊 中村虎之介
外在蟻助 中村山左衛門
岩渕忠太 片岡亀蔵

腰元お菊役の虎之介さんがとにかく良かったです。許嫁の話をしたときの可愛らしさ幸せさがふとした表情からにじみでていていただけに、そのあとの悲劇が凄まじい。不憫ではあるけれど、ただ弱いだけではない、生への欲求と主と許嫁へのまっすぐな想いとそれを理不尽に絶たれたことへの恨みの強さ深さがものすごく感じられました。

お菊神社へお参りしにいくと「烈女」という碑が。「烈女」というのは「節操をかたく守る女子。また、信念を貫きとおす激しい気性の女子」(←知らなかったのでその場で検索)のことだそう。 「播州」のほうの皿屋敷を観たのが初めてだったため、お菊さんにはとにかく不憫で可哀想という印象があったけれど虎之介さんのお菊さんをみて「烈女」ということばになるほどとなりました。

お菊神社
「烈女」の碑


責められているときの虎之介さん、本当にゾッとするような色気がでていてそれを美しいと感じてしまうことにこちらが罪悪感を覚えるほど…。今までみたことがあった虎之介さんの女方のお役では感じたことのなかった気持ちが…(どきどき)

鉄山役の橋之助さんは、個人的には真面目そうなお役の印象があるのだけれど、変態クソ家老を見事に演じられ(褒めている)これもまたとても良き。それにしても鉄山、本当に酷いやつですな…(思い出すだにムカッと…)。亀蔵さんはああいうお役似合うのわかってたけどやっぱり似合う(まっすぐ真面目なお役も素敵ですが…)

姫路城内にあるお菊井戸



暗闇の客席演出は、何がおこっているのか分からない恐怖でギャーッ!!となりますね…。二度目はアレに当たったので普通にギャーッ!!となりました(実に古典的な手法ですがシンプルに怖かった)。こういう演出も中村座ならではでまたできるようになって良かった。

余談。二度目は桜席にて拝見したのですが、近くに赤ちゃんのお客様がいて、最後に帰るときに気が付いた虎之介さんが怨霊メイク(うがいはしていたけれど口端から血糊…笑)のまま手を振っていたのがツボりました


「鰯賣恋曳網」

配役
鰯賣猿源氏 中村勘九郎
傾城蛍火実は丹鶴城の姫 中村七之助
博労六郎左衛門 中村橋之助
傾城薄雲 中村鶴松
庭男実は薮熊次郎太 中村いてう
遁世者海老名なあみだぶつ 中村扇雀

歌舞伎には珍しいハピハピハッピーなお話で皿屋敷からの温度差で風邪ひいちゃう。

猿源氏のよわよわな呼び声が揚幕のなかから聴こえてきただけでふふっとなり、ピンクの病鉢巻は恋煩いゆえか…とまたふふふとなり、出だしからもう気持ちが明るくなってきます。何…?勘九郎さんはチャーミングの擬人化なの…?軍物語をする場面など、勘九郎さんほどに楽しく演じられる役者さんが想像できないほどに一挙手一投足が本当にキュート。

七之助さんの蛍火はきりりと美しく、しかし傾城に似合わぬ貝合わせをする場面では少しおっとりと可愛らしい性格をみせる。鶴松さん演じる薄雲さんはじめとする傾城ズもちょっとわちゃっと悪戯な感じが魅力的。いつも傾城というとがっちりキメたお座敷の場面が多いので、こういう普段の(?)傾城たちの姿が楽しい。

いてうさんのお役がまた良き(出てきたときはいかにも不審な動きだけれど、隈取りで悪いヤツじゃなさそうとわかるのは歌舞伎の良いトコロ?)。主に戻った蛍火が科白をキメたあとに猿源氏がぺしっとするの、もともと女方さんが「~しやしゃんせ(ペシッ)」とやる仕草が大好きなものでめちゃ笑ってしまった(細かすぎて伝わらない歌舞伎の好きなところ)

平成中村座ならではの舞台の後ろ全開演出は、もう爽やかな風とともに美しい白鷺城が広がってなんとも清々しい心持ちに!さらに鰯賣の呼び声の合唱で小屋全体が一体となって「ああー!平成中村座だー!!」と楽しくて楽しくて仕方がなかったです。

お茶子さんのお話によると、背の高い姫路城に合わせて今回小屋を底上げしているそうですね。

中からの景色は撮影できないけれど、
本当にこんな感じにお城が…
平成中村座飲み処にて「鰯賣戀曳網」
shioさん特製オーガニックジンジャーレモネード金平糖添え


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