【その6】家族ではなくチームとして生きる
この内容は、妊活・子どものことに関する内容です。
あくまで一個人の考えであることを理解し、読み手の気持ちを尊重してください。
はじめてAくんに会う日がやってきた。
担当の職員さんと事務所で待ち合わせをして、Aくんの過ごしている家まで歩く間、Aくんが関係する国がどこなのか聞いた。
聞いたところで、私たち夫婦がその国について知っていることなんて、たかが知れているので、聞いても「ふ〜ん、そうなんだ〜」で終わった。
事前に職員さんがAくんに「Aくんと遊びたい人がくるよ」と説明してくれており、家に入ると「○○(苗字)さんだよ」と紹介してくれた。
最初は、緊張した面持ちで、施設のほかの子と遊びながら、
「こんにちは」
と挨拶してくれた。
見た目は確かに純日本人!ではないが、日本語を話し、意思疎通には問題ない。
緊張していたが、自分の部屋からおもちゃを持ってきて紹介してくれるうちに、だんだんと口数が増えていく。
私たち夫婦はここで、「仮面ライダーめちゃくちゃ進化してるね…最近のおもちゃすごすぎ…」と、タイムスリップするような感覚で、おもちゃを見せてもらった。
なんかめっちゃ光るんだね、色々と…。
15分ぐらい室内で会話した後、建物の横にあるグラウンドに行き、外で遊ぶことになった。
職員さんから
「Aくんは肩が強くて、体力もすごいあります!」
と聞いた通り、私たちの前で鉄棒(連続逆上がり)をしたり、クライミングの壁を登るのを見せてくれた。
あっちこっちに移動するのでグラウンドの中を小走りでついて回ると、満足そうによく笑うようになった。
夫が野球をやっていることもあり、一緒に野球を始めると周りで遊んでいた施設の子たちも、私たちの輪に加わる。
その子たちがみんなAくんを中心に遊んでくれていたこともあり、「今日は主役!」というポジションを与えられ満面の笑みを見せてくれるようになった。
それを見て、周りにいた職員さんたちも
「今日は主役だから、Aくんずっと笑顔だね」
と話していたのが聞こえた。
約50人の子どもがいるなかで、「主役」になれる日は、何日ぐらいあるのだろうか。
そして「里親さんと関わるのNG」と実親にされた子たちが、主役になる日はあるのだろうか。
そんなことを後から思った。
主に夫がAくんと遊び、私はAくんから審判を命じられることが多く、そこに施設の子どもたちが寄ってくる。
「ふたりは結婚してるの?指輪してる?」
そう聞いてきた小学生の女の子たちに
「うん、結婚してるし、指輪もしてるよ」
と指輪を見せた。
すると
「キャー!」
と言いながら照れる反応を見せてくれて、「さすが女の子、可愛いな」と思った。
(そこ照れるの私の役目なんだけど)
1回目の面会は、約1時間ほど。
汗をかくほど遊んだAくんは、夫と遊ぶのを気にいったのか帰り際
「明日もくる?」
と聞いてくれた。
「明日は仕事だから来れない。」
と答えると、残念そうな顔をして、職員さんの陰に隠れた。
「また来るね〜」
と言ってハイタッチを求めると、私にも夫にもハイタッチしてくれて、その日は終了した。
後日、お酒を飲んで酔った夫が
「あの"明日も来る?"って本心だったのかな?
職員さんにそうやって言えって言われたんじゃないかな?」
と不安がっていた。
私はちょっと考えて
「もし私が職員さんに言えって言われたとしても、遊んでつまらない相手にはその指示を破って言わないと思う。
だからそうやって聞いてくれたってことは、本心だと思おう〜」
と返しておいた。
小さな子ども相手に疑心暗鬼になりすぎである。
まずは私たちが信じるところから始めねば。